内需の時代

新型コロナの問題で、中国が他国への医療支援に奔走しているらしい。
AFPによると、中国はここ数週間で、
フィリピンやパキスタンに大量のマスクや検査キットを寄付し、
イランやイラク、イタリアに医療チームを派遣、
スリランカには5億ドルの融資をしたという。
EUから医療用品の輸出を禁止され困っていたセルビアには、
医療団と医療用品の支援を約束し、大いに感謝されているらしい。

新型コロナウィルスが中国から世界に広まったことで、
中国は世界への支援に躍起になっているのだろうが、
アメリカが自国の立て直しに必死になる今、
中国の世界への影響力は、今後増していくと考えられている。
感染症には国境の概念がないので、
どこで最初に感染が爆発したかは問題ではないと言われるが、
中国から始まったウィルスで多くの命と職を失った(特に欧米の)人々が、
中国に対してなんのわだかまりも憎悪もなく、
今後外交や国際関係をやっていけるとは到底思えない。
今回の新型コロナウィルスは、
世界のパワーバランスを変えるだけのインパクトを持った出来事で、
それがわかっているからこそ、中国は積極的に外交に打って出ている。
アメリカのトランプ大統領は今年の大統領選挙で再選されるかどうか、
微妙なライン上だと言われているが、
もし再選されれば、正面から中国とやり合うのは目に見えている。

新型コロナの影響で航空業界・観光業界は大ダメージを受けており、
今後、政府の支援を受けられなかった各国の航空会社は
次々と倒産していくことが予想されるが、
海外旅行が気軽にできなくなる「アフターコロナ」の世界において、
経済を回していくのは、一にも二にも、内需ということになる。
日本においても、海外からのインバウンド客が回復するのは
早くても2年から5年はかかるだろうが、
国内旅行客の回復は、それよりも早く訪れることが確実である。

2018年度のデータでは、日本のGDPに占める輸出の割合は14.8%で、
OECDの中では、アメリカに次ぐ世界2位である。
また、輸出依存度で見ても、29,3%、207カ国中、184位と、
日本はあまり輸出に頼った経済体制をとっていない。
(ちなみに中国も当然、32%と内需が大きい)
日本は世界有数の内需大国であり、そのことが原因で
これまでなかなか日本はグローバル化が進まないことや、
いつまでたっても日本人が英語をしゃべれないことを批判されてきた。
それがここにきて逆に有利に働くとは皮肉な話でもあるが、
これまで輸出企業を優遇してきた分、
内需拡大のため、従業員数で全体の7割を占める中小企業や、
GDPの半分を占める地方経済圏を活発にしてほしい。

歴史的に、日本は中国の王朝が元気な時期は内にこもることが多かった。
グローバリゼーションが叫ばれていた平成の時代に、
「今は中国の威勢がいいから、日本はうちにこもろうよ」と言うと、
グローバルな潮流がわかっていない意気地なしの意見に聞こえたが、
今回の一件で、内にこもることがまた違う視点で語られるようになるかもしれない。
そう考えると、世間で声高に潮流として喧伝されているようなことは
何のあてにもならない。
先週までに、海外便の9割を減便し、客室乗務員の8割を帰休させ、
一兆円規模の融資を日本政策投資銀行に要請したANAは、
その3ヶ月前には、「大学生が入社したい企業ランキング」の堂々2位だった。
一寸先は闇である。