1/12 間接話法的な教え方

英語圏の人が人を落ち着かせる時に、
「calm down」という言い方をするけれど、
その言い方が、
「calm down」ではなく、
「calm dooooooooooooooown」と、ゆっくり単語を伸ばして言うのが頭に残る。
言葉をゆっくり言うことで、
焦っている相手に寄り添い、うまく落ち着かせようとする。
言葉自体が「calm down」している。

文法には、直接話法と間接話法という言い方がある。
「あなたは最高だって社長が言ってましたよ」は、間接話法。
「『あいつ最高だな!』って社長が言ってましたよ」が、直接話法だ。
欧米人(特にアメリカ人)の表情が豊かで、表現が大きいのは、
彼らが「直接話法的」に話すからだ。
話し方がおどけたり、ひょうきんだったりするのも、
一般人が映画の中で演技していても様になるのも、
普段から、「直接話法的」に話しているからだ。

スポーツにおいても、
コーチが緊張している選手に声をかける際、
「Relaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaax」と、
コーチは、リラックスした声と抑揚でもって、
選手に声をかける。
コーチのリラックスした声と言葉を聞いて、選手はリラックスするのだ。
相手の緊張した心情、状況に寄り添って声をかけることで、
欧米のコーチは、緊張を解きほぐそうとするが、
日本のコーチは、「間接話法的」に選手に声をかける。
最悪なコーチは、「そんなに緊張するな」と言ってしまい、
逆に選手を緊張させてしまうこともある。
「緊張するな」と言われて緊張しない人は、
最初から緊張なぞしていない。
「肩の力を抜け」というコーチもいるが、
「肩の力を抜け」と言われると、
肩の力を意識してしまうのが、人間だ。
日本のコーチは、アメリカのコーチのように、
寄り添った言い方をしてくれない。
選手と同じ位置に立ってくれない。
言葉が、なんとなく、遠い。

では、日本のコーチはその点で劣っているのかというと、
もちろんそんなことはなく、
日本の名将、野村克也は、
肩の力の入っている選手に対し、
「足の親指に力を入れろ」と言っていた。
足に力を入れて踏ん張れば、自然と肩の力は抜ける。
力を入れるべきは、肩ではなく、下半身。
言葉で、意識を違うところに向けさせて、無駄な力を抜かせる。
そういう方法で、選手をコーチングしたりしている。
日本の指導者は、おどけたり、ひょうきんでもない人が圧倒的に多いが、
「間接話法的」に、適切な指導をしている。
「遠く」ても、「有効な」言葉でもって。
「直接話法」社会には、「直接話法的」な、
「間接話法」社会には「間接話法的」なりの、教え方がある。