5/3 ジャンガジャンガがわかる国

ふと気になったことをすぐに口にしていい友だちと、
口にしてはいけない友達がいる。
どんなくだらないことでも言える関係と、そうでない関係。
以前、台湾の女友達と話していた時に、

「なぜ人間は、どんどん平均身長が高くなっているのか」
という疑問が、急に頭にわいてきた。
でも、彼女は、気になったことをすぐに口にしてはいけない友達。
まだ、そこまで仲良くない関係。
でも、我慢できない。言葉にしてみたい。

まだ信頼できる関係はできないけど、思い切って、切り出してみる。
「あのさ、なんで人間ってどんどん身長高くなってるの?」
「?」
「100年前とか200年前の人って、今よりもっと小さかったじゃん」
「?」
「いや、僕らのさ、僕らの親が若い時って、
 みんなもっと背が低かったわけじゃない」
「・・・まだ、生まれてなかったから・・・」
「いや、生まれてないと思うけどさ、戦前の写真とか、
 近世の写真とか、みんな小さいじゃん。
 いまより、確実に小さいでしょ?」
「?」
「いや、ナポレオンが親衛隊に囲まれてた時とかさ・・・」
彼女は、首をかしげながら、
僕の話に乗ってあげれないことに対し、申し訳ない表情を浮かべている。

「んー、そうか。あの、じゃあさ、
 昨日インスタグラムに投稿してたパンケーキの話でもする?」
「(笑)」
その子は、笑っていた。

「何で人間の平均身長は伸びてるのか?」の前提として、
「昔の人は今の人よりも小さかった」という事実を共有できない二人の間では、
会話が盛り上がらない。
ただ、台湾人の彼女とは、その盛り上がらなさを一緒に笑えたけど、
もし彼女が台湾人ではなく欧米だったら、

なぜ会話が噛み合わなかったのか、何が言いたかったのか、
盛り上がらなかった原因を確認しようとしたんじゃないかと思う。
「パンケーキの話」を振ることで、
噛み合わなさを笑いで終わらせることはしなかったんじゃないだろうか。

「アンガールズ」というお笑いコンビの代表的なネタに、
「ジャンガジャンガ」というネタ(?)ある。
二人のやってることが噛みあわなくて、状況がグダグダになったところで、
「ジャンガジャンガ×4ジャンガジャンガジャーン」
と二人でポーズを取ってお終いにし、次のネタに移るのだが、
この笑いは、西洋人には理解されないような気がする。
グダグダになった自分たちを、「ジャンガジャンガ」して
笑えるセンスは多くの欧米人は持っていないんじゃないかな。

たぶん、国際社会では、前提が共有できずに話が噛み合わないことが
よく起こっていて、それは時に街のカフェだったり、時に、国際会議の場だったりする。
それが国際会議の場合、話が噛み合わずグダグダになった会議を、
日本や台湾が、「ジャンガジャンガ」でリセットして、
「もうグダグダだから次にいこうぜ」と思ったとしても、
他の西洋の、論理的な国が、
「問題をうやむやにするな」といって次にいかせないことがあるのかもしれない。
日本や台湾が、「ジャンガジャンガ」を「割り切り」として使おうとしても、
西洋諸国は、「ジャンガジャンガ」を「問題の放置」と考える。

日本はすぐに「水に流す」国なので、
先祖や歴史など、過去のできごとが現代に強く影響を及ぼすような国から見ると、
国としての一貫性がなかったり、過去を反省していないように見えることがある。
ただ、多くの災害を経験してきた日本は、歴史上、
どうしようもない状況に陥ったら、
「ジャンガジャンガ」して、
リセットするという方法を取ってきた。
というか、災害自体が、それまでの日々を突如終わらす、「ジャンガジャンガ」だった。
「ジャンガジャンガ」してくる天災によって多くの経験をしてきた日本では、

「なぜ状況が悪くなったのか」と、過去に思いを巡らすよりも、
「明日からどうするか」の未来を考えることのほうが大切だった。

「ジャンガジャンガ」で自分たちの上手くいっていない状況を笑えるセンスは、
過去を振り返らず、明日へ踏み出す力だ。
「ジャンガジャンガ」がわかるというのは、そういうこと。
そういえば、台湾も毎年のように、

台風や地震の被害に合っている災害大国だ。
台湾のあの子が「ジャンガジャンガ」的会話で笑ったのも、
災害の多い国で生まれ育ったからかもしれない。
そう思うと、日本のお笑い業界が世界に打って出る際は、
災害の多い国を目指したほうがいいのかもしれない。

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