別れ

「もう私達別れよう」と
別れを言葉にして確認しあっている恋人に別れはこない
別れは、「別れよう」の「わ」の字も出なくなったところに現れる
人との別れを決めるのは言葉や意識ではない
人との出会いがそうでないように

中世の歌謡集『閑吟集』に、遊女が男に心を寄せて詠んだうたがある
深入りするな、深入りするな
心を寄せても、離れる際に余計大変になるだけ
そう、自分を戒めるようなうた

ただ 人には馴れまじものぢや
馴れての後に
離るる るるるるるるが
大事ぢやるもの

だめとはわかっていても、心はすでに相手のほうを向いていて、
「離るる」の「る」が、彼の後を追いかける。
どうせ、離れる時が来るの。
離れる時が・・・
離れるるるるる・・・るるる・・るる・・る・・・

うたの上で「る」が続いてるうちは、彼への執着はきえない
本当の別れは、「る」が消えてなくなったところに訪れる

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