カルシウム味①

第6の味覚は「カルシウム味」になるかもしれないという。
人間の基本的な味覚は、
「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」の4つで、
それらの関係を理論づけたドイツの心理学者・ヘニングは、
4つの味を、「四面体」を使って表した(ヘニングの味の四面体)。
近年、日本の池田菊苗が発見した「旨味」が5つ目の味覚に認定されたが、
そこに、「カルシウム味」が6つ目の候補として登場したらしい。
それまで「甘味」「酸味」と、漢字一字で表していた基本の味群に、
突如現れたカタカナ語「カルシウム味」とは、一体なんなのだろう。

これまでも、鳥やラットが、カルシウムに対して食欲を持つことは知られていたらしい。
しかし、最近の研究が、ヒトにも鳥やラットと同様に、
カルシウムに対する味覚受容体があることを発見し、
カルシウム味は、人間の6つ目の基本味覚候補に突如、躍り出たという。
基本の4つの味を、4つの頂点を持つ「正四面体」で表したヘニングにしてみれば、
基本味覚が5つになろうが6つになろうが、
もう正多角形を作ることはできないので(「正四面体」の次の「正六面体」の頂点は8つ)
どちらでもいいのかもしれないが、
カルシウムの味にピンとこない私たちからしてみたら、
基本の味が「カルシウム」なんて、困惑でしかない。
味覚は、例えば、苦味だけでも20数種あるため、
基本の味覚の一つにするかどうかは、恣意的な線引きがあるのだろうが、
カルシウムなんて、「酸味」の親戚みたいな味だし、
基本味覚の一つになるような立派な味かしらと、思ってしまう。

「カルシウム味」が第6の味覚になれるかどうかは専門家に委ねるしかないが、
それよりも気になるのは、第5の味覚「旨味」についてだ。
ずっと抱いている疑問なのだが、
「旨味」という名前は、誤解を生まないのだろうか。
「旨味」は日本で発見されたこともあり、
欧米でも「Umami」で通用するらしいし、
そもそも、欧米人にはその味自体が、いまいち敏感に感じられないのだというが、
それは「旨味」という名前のせいではないかと訝しんでしまう。
訝、訝、訝・・・。

英語でいうならば、「酸味」は酸っぱいということで「taste sour」であり
「塩味」はしょっぱいということで「taste salty」であるが、
「旨味」はうまいということなので、「taste delicious(savory)」ということになるらしい。
しかし、「デリシャス」というのは、「甘くてデリシャス」とか
「塩味が効いててデリシャス」とか、味の性質というよりも、
味わった際の好意的な感情を表す形容詞なので、
「デリシャス=うまい味」が、味覚の多面体の一角を成していいのだろうかと思う。
そう考えると、5つ目の基本味は「Umami」ではなく、
「Dashi-mi(出汁味)」とかの方が良かったのではないだろうかと思う。

ただ、4つだとされていた基本の味覚が、
時代とともに5つになり、6つになるのは、
世界が固定されず、変動していくという意味では、良いことである。
固定化された世界は、生きにくい。
特に、後から世界に入ってきた子どもにしてみると、
固定化された世界は、救いがない。
元子どもとしては、世界の枠は常に変動し、変わる可能性を残しておいてほしいと願う。
(つづく)