ペイ

日本医師会がインターネット上で叩かれている。
長引くコロナ禍で社会が我慢を強いられているにもかかわらず、「もっと医療現場を気遣え」という内容の文書を発表したからだ。
しかも、日本医師会は、医療会を代表する団体というより、開業医のための団体であり、今回のコロナの最前線で患者の治療に当たっているのは、ほとんどが公営の病院だということから、「どの立場からもので言ってるのか」という批判が巻き起こったのだ。

新型コロナは指定感染症の二類に分類されているので、どの病院でも治療ができるわけではない。
しかし、日本の医療崩壊を憂うのであれば、民間病院がこの現状を打破する提案をしてもよさそうなもの。
しかし、コロナに対して積極的な関与をせずに、さも医療界の代表のようなものいいで声明を出す。
そのことから、自分たちの病院経営が悪化しているのをはやく止めたいのだろうと、邪推されている。

開業医というのはどうも儲かるらしい。
勤務医の年収と比べても倍くらい儲かるらしいし、大きな公営病院の上層部よりも手取りははるかに多いと聞く。
日本は欧米に比べると開業医の割合がとても大きく、日本医師会は日本でも最強の圧力団体であるともいう。

儲かることを知っている開業医たちは、自分たちの子どもも当然のように医者にしようとする。
国公立医学部生の3割、私立では5割の親が医者だというデータがある。
私立の医学部は、6年間で学費が3500万円ほどかかるが、そんな金額を軽く払えるのが開業医であり、3500万なんてすぐにペイするのが、医者という職業なのだろう。
子どもを医学部に入れたいが、子どもにその学力がない場合は、医学部専門の予備校に通わせることになる。
予備校の近くに住まわせて、一年間みっちりやれば合格できるということで、親は惜しげもなく金を出す。
その額、一年で1500万円也。
医学部の一年間よりはるかに高いじゃんと思うが、そんなものはすぐにペイすると考える医者にとってははした金なのだ。
中には、子どもが思ったより出来が悪くて、2浪、3浪、4浪することもザラにあり、2000万、3000万、4000万と経費は積み重なっていくのだが、それでもペイするのが、医療業界なのだ。
絶対に、諦めない。
この精神が大切なのだ。
諦めたら、それまでかけたお金がパーになるし、自分の子どもが”パー”だという現実を直視しなければならない。
誰も現実は見たくないものだ。
しかし、本当に”パー”になったのは子どもの頭ではなく、子どもの時間である。
若者として過ごせる大切な時間が、劣等感と、未来のための犠牲だけで終わってしまう。

そうした子どもたちは不憫としかいいようがないが、ここではそれは置いておく。
問題なのは、そうして医者になった子どもとその親は、自分たちのことだけを考えて仕事に向かうということだ。
浪人までして医学部へ進み、医師免許も取って、研修生活や若手の下積み時代を終えたら、それ以降は、これまでの分を取り返すべく、自分たちのために稼がなければならない。
自分たちがかけたお金を取り返しにいく戦い。
そこに社会や患者への視線はない。
患者のことをいくら考えても金は戻ってこないのだ。
考えるべきはこれまでかかった経費。
そこに、「医師会」が国民に支持されない理由と同じものがある。
患者不在で、医者しかいない。
それは「医者の倫理」の欠如というより「システム」の話だろう。
医者を作り上げるシステムが、患者不在の医療を招いている。
そして、今の育成システムに問題があるということは、その育成システムが作った医者が活躍する2,30年後の社会で問題が顕在化するということだ。
教育は、未来をつくる。
この国の医療の未来は、決して明るくなさそうである。