あてさき

「おおがたばすにのってますー」と
電車内で子どもが大声で歌う
「しー、静かにして」と
父親がたしなめるが
「きっぷをじゅんに渡してねー」
と歌い声は止まらない
「静かにしなさい」
そう父親は子どもの腕を掴むが
子どもの歌はいっこうに小さくならない
「よこむいて、はい、よこむいて、はい」
「いい加減にしなさい!」と、
父親は手首を叩くが
子どもは怒られることにも慣れた素振り
それを見た母親が子どもの口元のすぐそばに耳を近づけると
大きかった子どもの歌声は急にしぼみ始めた

子どもが届ける歌には「宛先」がある
「宛先」が遠ければ歌声は大きくならざるをえないが
「宛先」が近ければ歌声は小さくてもよい
「音量」を調整させようとするのではなく
「宛先」を移動させることで事が収まることもある

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この記事を書いた人

はじめまして慶虫です。西日本で高校生相手に教育系のしごとをしています。 日々、考えたことを書いています。

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