まちの歌

初めて行く海外のまちに着くと思うのだけれど、
「まちの歌」ってのがもっとあってもいいんじゃないかと。

例えば、ニューヨーク旅行を計画している時や
ニューヨークに向かう飛行機の中で口ずさむような、
「ニューヨークの歌」のようなものがあるといいなと思う、
というか、なんでないんだろうといつも思う。
香港の歌とか、ロンドンの歌とか、チュニスの歌とか、
そのまちに行ったら必ず歌う歌があれば、
もっと気分が盛り上がって旅が楽しくなるのに。
旅に歌はつきもののはずなのに。

そう思ったのは、サンフランシスコに行った時に、
ある歌をずっと口ずさんでいたから。
「サンフランシスコの チャイナタウンで飲茶〜」

子どもの頃、ミスタードーナツのCMで流れていたその歌は、
サンフランシスコのチャイナタウンのことを歌っていて、
当時は、そんな歌詞だと意識したこともなかったけど、
サンフランシスコのチャイナタウンに来てみると、
頭に残ってたその歌をつい口ずさんでしまう。

そういう歌がどこの都市にもあれば楽しい。
そのまちのことを歌詞で歌っていなくても、
まちや国のイメージが付いている歌ならいい。
ジャマイカに行った時、ボブ・マーリーを歌ったり、
湘南に行った時、サザンを口ずさんだりするような。

でも、そう考えると、国内には歌う歌がたくさんある。
新宿で椎名林檎歌って、渋谷で小沢健二歌って、
京都でくるり歌って、大阪でやしきたかじん歌って、
静岡で「天城越え」歌って、長崎で「長崎は今日も雨だった」歌えばいい。
国内には歌う歌がたくさんある。

問題は海外なのだな。
知らなすぎるのだ、海外の歌事情を。

本当は、スイスにも「アルプス超え」みたいな歌があるし、
ボストンにも「ボストンは今日も雨だった」みたいな歌があるはずなのだ。
それが日本まで届かないから、パリに行って「おおシャンゼリゼ」歌って、
スイスに行って「アルプス一万尺」歌うくらいしかないのだ。
知識の不足が問題なのだな。

サンフランシスコのチャイナタウンで、ミスタードーナツのCMを口ずさんでいた時、
一緒に御飯を食べたアメリカ人もフンフン歌っていたので、
「なに歌ってんの?」と聞くと、
「フルハウスのオープニング」とのこと。
ああ、そういえば、フルハウスもサンフランシスコだ。
「この近くに本物のタナー家があるんだよ」と教えてくれる。
やっぱり、知識があれば、口ずさめる歌も増えるんだな。
知っているってことで楽しみが増えることはあるよね。

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