ロザリオ

雪が降る教会の芝生で、言葉の世界にまだ入っていない娘が作る雪だるまを見つけて近寄ってきたホームレスが、
自分がいつも肌身離さず身につけているロザリオを娘に渡して見せてくれた。
それと一緒に、いつも唱えているラテン語の祈りの言葉も教えてくれたが、
ラテン語なので僕にはわからなかった。
ただ、その響きが、ばあちゃんが仏壇の前で唱える
「なーもあーみだーんぶー」似ていて、
敬虔なクリスチャンなんだろうなと思った。

娘は渡されたロザリオをぐっと右手で握りしめながら何も言わずに雪だるまを見つめ、
僕は、数珠を肌身離さずいつも身につけていたかつての自分を思いだして、
自分の目の前にいる、ロザリオを渡したこの男はいつかの自分なんだなと思った。
どおりで、遠慮なく、ぐいぐいくる。

夢分析においては、
夢に出てくる人物というのは、皆、自分と解釈することができるらしいが、
多分、夢の中じゃなくても、
目の前にいる人は誰もが自分であるといえるのかもしれない。

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