ワニのたまご

ワニの子どもがオスになるかメスになるのかは、卵が孵化した時の温度の違いでしかないという。
卵が孵化した際の温度が、30度~32度ならオス、それ以外ならメスである。
この驚くべき事実は、「温度依存性決定」と呼ばれている。
ヒトは恒温動物であり、卵で子を産むわけでもないので、この性質は関係ないらしいが、もし、ヒトが子を生む時も、このくらい簡単に男女が決まっていて、受精した瞬間の部屋のエアコン操作一つで性別が決まるとすると、この世には男が増えていくのだろうか、それとも、女が増えていくのだろうか。

歴史を振り返ると、日本やアジア、欧米諸国では、男児を望む声が多かったように思うが、女性が土地や財産を継承していく女系の文化では、女児が望まれてきたのだろうか。

一人っ子政策が続いた中国では、今でも男児を望む声が圧倒的に多く、一時期、生まれる女児100に対して、男児が120にも達するようないびつな状態になってしまっていたらしい。
その結果、全人口において、3300万人の男女差が生まれ、結婚適齢期の男性が多く「余る」という現象が、社会問題になっているときく。

翻って、今の日本社会というか、自分の周辺を思いかえしてみると、男児よりも女児を望む声が大きいように感じる。
ネットで見ただけなので、どこまで正確な数字かはわからないが、統計数理研究所による調査によると、「もし自分の子が一人っ子だとした場合、男女どちらの性別がよいか」という質問に対し、男児がほしいと答えた割合は「26%」、女児がよいと答えた割合は「46%」だという。
また、中でも、回答者が女性の場合、その回答は、男児「17%」に対し、女児「61%」と、圧倒的に、女児を望む声が多くなっている。

この結果から、もし、エアコンの温度操作一つで子どもの性別か決まる現実があれば、日本社会は、女性が確実に多い社会になっていくと考えられる。
これは、これまでの日本の歴史の中で一貫して変わらなかった(であろう)、「女より男が望まれている」という社会の前提がひっくり返った時代に、私たちは突入していることを示している。
望まれているのは「女」であり、「男」は第2希望なのだ。

エアコンの温度設定というのは一つの例であり、今でも産み分け技術があり、未来にはその技術がより身近になること、また、人々が、より意識的、選択的に子を生むことを考えると、近い将来、日本には女性が多い社会になり、その、女性が多いことを前提にした世の中が形成されていくと予想される。
男の自分としては、悲しいような、だが、それでもいいような気もするが、時代の変わり目にいることだけは間違いなさそうである。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次