陸上の短距離走が盛り上がっている。
先日行われた、100m走の日本選手権では、
サニブラウン・ハキーム、多田修平、ケンブリッジ飛鳥が表彰台に立ち、
10秒01という歴代2位の記録を持つ桐生祥秀は、4位という結果に終わった。
短距離界は戦国時代に入り、
誰が最初に9秒台を出すかに大きな注目が集まっているが、
9秒台に届きそうな選手が4人も5人もいるなんて、
数年前までは想像だにしていなかった。
当たり前のように皆が9秒台を期待する中で走るのは大きなプレッシャーだろうが、
本人たちも9秒台を出せると思っているのだろうし、
そのうち、9秒台は、本当に出てしまうのだろうと思う。
「9秒台なんて不可能」と思うよりも、
「9秒台はそのうちでる」と、周りや本人が思っている方が、
ずっと簡単に9秒台は達成される。
できると思うことはできる。
脳は、そういうふうに、できている。
北欧にエストニアという小さな国がある。
杉並区と世田谷区を足した数の人口しかいない小さな国だが、
最先端のデジタル国家として知られており、
たくさんのスタートアップ(ベンチャー)企業を生み出している。
そのIT起業勃興のきっかけになったのが、
インターネット電話サービスのskypeで、
それまで世界的スタートアップを生み出すのは、
海の向こうのアメリカ人だと思っていたエストニア人たちが、
身近な存在であったskypeの大成功を目の当たりにして、
「俺らにも、できるんじゃねえの?」
と思い、多くの若者が行動し始めたのだ。
自分たちと同じようにソーセージを食って、
自分たちと同じようにビールを飲んでるやつらにできたのなら、
俺にだってできるはず!
近くにいるやつにできるなら自分にもできる。
そういうふうに、人間は考える。
若干14歳の棋士、藤井聡太四段の勢いが止まらない。
14歳とは思えない突出した活躍を見せているが、
これから、藤井四段を追いかける同世代棋士が必ず、現れてくる。
30年前、羽生善治を追って、
佐藤、藤井、森内などの同世代棋士が多く現れたように、
一人の突出した才能は、違う才能を連れてくる。
人は、頭の中にある「常識」を打ち壊す才能を目の当たりにすると、
それまで自分には無理だと鍵をかけていた脳を施錠する。
「あいつにできたんなら、俺にも、できるはず」
そうやって、知らず知らずのうちに、人は人を伸ばしていく。
「足の引っ張り合い」の反対の、「人の引っ張り上げ合い」。
新しい時代や新たな記録は、そうやって、みんなで、
引っ張り上げ合いをしながら、作られていく。
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