「人生で必要なことはすべてマンガで学んだ」。
人生で必要なことはすべて〇〇で学んだという言い方はいく通りもあって、
〇〇は、映画だったり、ゲームだったり、自衛隊だったり、ドラえもんだったり、
なにを入れてもいいことになっている。
人生に必要なことを一つのジャンルで教わることはないだろうと思うけれど、
僕が入れるなら、〇〇は「マンガ」で、
マンガから学んだことは、
生き方や考え方に限らず、言葉や表現など、たくさんある。
「台風一過」という言葉を初めて知ったのは、あだち充先生の「H2」で、
単行本を読んだ翌日に、
国語の四字熟語のテストに出たのでよく覚えている。
「組織票」という言葉を初めて知ったのは、水島新司先生の「ドカベン(プロ野球編)」で、
大人たちはそんなズルいことをするのかと、衝撃を受けた。
マンガは、色々と知らない言葉を教えてくれる。
先日、高校生に英語を教えていると、
「no big deal(大したことじゃない)」という表現が出てきたので、
「no」を取って、「big deal」でも同じ意味だと説明すると、
彼らは、「no big deal」と「big deal」が同じ意味なのは解せないと言う。
「no」があってもなくても同じ意味になるのは、
それが皮肉だったり、だれもがシチュエーションから読み取れるからなのだが、
日本語で何かいい例を言ってあげようと思い、ふと思いついたのが、
「ふざけろ」だった。
通常、「ふざけるな」という場面で「ふざけろ」と言ったとしても、意味は変わらない。
「ふざけるな」と「ふざけろ」は否定と肯定でまったく逆のことを言っているが、
シチュエーション的にはどちらを言っても同じこと。
「ふざけろ」でも「ふざけるな」でも、
「no(否定)」があってもなくても同じなのだ。
そう説明すると、高校生たちは、
「”ふざけろ”なんて、聞いたことないです」という。
え?
聞いたことないの?
80年代の不良マンガにはしょっちゅう出てきていたし、
冒険マンガでも、刑事マンガでも、「ふざけろ」はけっこう使われていた。
でも、平成の子は知らないんだなあ。
そう思い、別の表現で説明しようと思い、一つ、いい例を思いつく。
「嘘、おっしゃい」。
「嘘、おっしゃい」も「嘘、つきなさい」も、本来、
「嘘、つくな」と否定すべきところを否定していないにもかかわらず、
否定の意味を表している。
そう、説明すると、平成生まれ達はこぞって、
「嘘、つきなさい」がまったくピンとこないと言う。
え?
ピンとこないの?
学園モノの少女マンガにはしょっちゅう出てきていたし、
ファンタジーや日常系でも、「嘘、つきなさい」は使われていた。
一体、彼らはいままで何のマンガを読んできたのだろうか。
平成生まれが読むマンガのキャラクターは、
誰も、「肯定」で「否定」を表さないのだろうか。
マンガにしろ映画にしろ何にしろ、
人生で必要なことをたくさん教えてくれるような〇〇のいいところは、
いろんな年代の作品に触れられるところだ。
その中で、時代時代の流行り廃りも、言葉の移り変わりも知ることができる。
平成生まれ達は、もう、昭和を生きることはできないのだから、
せめて、作品の中だけででも、昭和を追体験して、
今の時代にない表現が昔あったことを知ってほしい。
その時、マンガでも映画でもゲームでも、
〇〇は、なんでもかまわないのだからさ。
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