使い慣れたものはなかなか手放せないもので、
高校の時使っていた電子辞書がまだ、手元にある。
電子辞書って便利だから世界中の英語学習者が使ってるんだろなと思っていたけど、
日本人以外で積極的に電子辞書を使っている人たちを見たことがない。
最近は、スマホに辞書機能がついているので、
アジアの子たちも、スマホで英単語の意味を調べていて、
僕が電子辞書を取り出して単語の意味を見たりしていると、
「それは、敢えての電子辞書なの?」
という目で、こっちを見てくる。
「敢えてじゃないし。いや、敢えてだし」
そう心でつぶやくけど、
敢えてなのか敢えてじゃないのか、自分ではよくわからなくなっている。
大学には、いつもコンパクトサイズの紙の辞書を持ち歩いている先生がいたけれど、
あれも、使い慣れているから持ち歩いていたわけであって、
「デジタルより紙が上等!」と思っていたわけではないだろう。
質ではなく、使い勝手の問題だ。
使い勝手は、その人が育った時代によって変わるものなので、
時代が変化しても、なかなかすぐには変わらない。
店舗勤務をしていた頃、僕が勤務シフトを作ると、
皆が、それを取りに事務所来ていたのだけど、
ある高校生のバイト君が取りに来た時に、事務所用の分しか残っておらず、
「ちょっと待って。いま、コピーするから」と、コピー機に向かうと、
「別にいいっす」と言って、
スマホでシフト表をパシャッと撮って、部屋を出ていった。
ああ、これがデジタルネイティブ。
写真で撮れば、紙なんていらないもんね。
そうジェネレーションギャップを噛み締めていると、
彼と入れ替わりに40代の社員が部屋に入ってきて、
「ちょっと、これ、もう書けないから、新しいのくれない?」
と、手に、「あ行」「か行」がちょっとずつずれてるタイプのアドレス帳を持ってやってきた。
「あ・か・さ・た・な」がずれずれで並んでいて、
「あ」と「さ」に挟まれた「か」のページをめくると、
「か・き・く・け・こ」の人の電話番号が書いてあるタイプのアドレス帳。
「そんなんもう売ってねえよ!」
デジタルネイティブ世代を見た直後に見た、
その時代のあまりの古さに、ついつい怒鳴ってしまった。
こんな人たちと若い子たちが一緒に働いてるなんて、
幅広い世代がいっしょくたに働いてるんだなぁ。
そう思って、ふと、念のため、パソコンでアマゾンのページを開いたら、
その手のアドレス帳は、たくさん売られていた。
「え?」と思い、棚からアスクルのカタログを取り出すと、
そこにも、その手のアドレス帳は、たくさん売られていた。
ふむ・・・。
時代は変わっていると思っていても、なかなか変わっていない。
「スマホ世代」、「コピー機世代」、「『あ』『か』『さ』『た』『な』のアドレス帳世代」と、
それぞれの使い勝手は変わらないのだから、
それぞれの世代向けの販売商品はなくならない。
うーん。
「お前は古い人間だ!」って、勢いで怒鳴っちゃって、ごめんね・・・。
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