弁論の国

メジャーリーグが揺れている。
2017年のワールドシリーズチャンピオンであるアストロズが、
チームぐるみで相手チームのサインを盗んでいたことが発覚し、
当時関わっていた監督やGMの首が飛ぶ騒ぎに発展している。
チームの人気選手たちも謝罪に追い込まれ、
連邦議会もアクションをおこすことになったらしい。
そして、先日、ついに、最高責任者であるジム・クレイン球団オーナーが
サイン盗みについて、会見を行った。

すでにサイン盗みを行っていたことは公にバレていて、
チームも、それを認めた上でのオーナーの会見である。
日本ならもう、ただただ反省の色を示すというか、
申し訳ないと繰り返すしかない場面だけど、
アストロズのオーナーは、まったく悪びれない。
記者から「ワールドシリーズで闘ったヤンキースにはなんと言いたいか?」
と質問されても、
「(サイン盗みは)試合結果には、大して影響なかった。我々は良いチームだった」
と発言。
さらに、NBCの記者に、
「今、ズルとおっしゃったが、ズルをしたということでいいのか?」
と詰め寄られると、
「我々は、ルールを破ったのだ」と返答。
「ズルはしていない」が「ルールは破った」。
だから、制裁は受けるが、申し訳ない顔はしないということだろうか。
弁論の国はさすがだなと思う。

同じ日に日本では歌手のマッキー(槇原敬之)が覚せい剤所持の疑いで捕まった。
これで二度目の逮捕なので、誰も同情はしていないようだが、
マッキーはなんらかの刑が確定し、釈放された後、
カメラの前で深々とお辞儀をするだろうか。
日本で許されるためには、法廷で決められた罰を受けるだけでなく、
申し訳ないという態度を世間に対して示さなければならない。
日本は、法よりも世間が強い。
それは、人気商売である芸能界だけに限らない。

「ルールは破った」とアストロズのオーナーが言うのであれば、
メジャーリーグのコミッショナーには、さらなる厳罰を期待したい。
アメリカは日本よりも明確な実力社会。
一つの勝利や一つの安打でサラリーが大きく変動する以上、
ルールを破って得た「勝利」や「安打」は返還してほしい。
その裏には、ルールを破られたことで、
「敗戦」や「被安打」を被った選手がいる。
サラリーの減額だけでなく、
退団や引退を余儀なくされた選手もいたはずで、
二年前、すでにグラウンドを去った彼らには弁論の機会も与えられないのだから、
弁論の機会のあるオーナー初め、責任者には、
ルールを元にした制裁を与えてほしい。
ズルを許さないことでスポーツは成立しているし、
なにより、アメリカは、
フェアであることを大事にする国なのだから。
ルール破りは、世間に頭を下げるだけでは許されない。
(頭を下げることもしていないけど)

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