「対物保険」
海外の高級工芸品店で商品を眺める。
地震が来れば、一発ですべてが壊れてしまいそうな繊細なガラス作品たち。
振り向いた瞬間、背中のリュックが当たってしまったらどうしよう。
何かにつまづいて、つかんだ棚が外れてしまったらどうしよう。
高級な店は、不安になる。
はやく、この店を出ようよ、みんな。
すると、渡航前に、対物保険に入ったことを思い出す。
「たとえ、店のものを壊してしまっても、2000万円までは保険が適用されます」
保険会社のお姉さんが言っていた言葉を思い出し、棚に近づく。
手を伸ばし、棚のガラス製品を片っ端から地面に落とし、
下の棚も、次の棚も、すべての製品をガチャン、ガチャンと床に落として、
ちょうど2000万円くらいのところで手を止める。
このくらいかな。
「ここでお願いします!」
対物保険ゲーム。
人は、不安になると、頭の中で現実を補完しようとする。
「似ている」
「それ素敵ね」
「それ素数ね」
「それ素麺ね」
これらの言葉は、よく似ている。
年上の女性が、僕がしているピアスを指さして、
「それ素敵ね」と言われたら、嬉しい気がする。
もし、僕がしているピアスが数字を模したデザインのピアスで、
「それ、素数ね」と言われたら、
それはそれで「知的な人だな」と、嬉しくなるに違いない。
でも、僕がふさふさしたものが付いているピアスをしている時に、
「それ素麺ね」と言われたら、その人を素敵とは思わないだろう。
「素敵ね」という人は素敵で、
「素数ね」という人は知的だけど、
「素麺ね」という人は、詩的ですらない。
その3つはよく似ているが、
それらは「字面」が似ているだけであって、
「音」が似ているわけではないから、現実的には、余計な心配でしかない。
しかも、僕はピアスをしないわけなので、
本当に、余計な心配でしかない。
「罰ゲーム」
大学の合宿で山の中にでかけた時、皆で集まってゲームをした。
「ゲームで負けた人の罰ゲーム何にする?」との問いかけに
ある女の子が、
「負けた人はこれから一週間、ご飯の時、ずっとヤクルトってのは?」と言った。
牛丼の時も
刺し身の時も
回鍋肉の時も、
今晩、夕食ですき焼きが出された時も、ずっとヤクルトかぁ。
それは嫌だなぁ・・・。
でも、我慢はできるなぁ・・・。
んー、いい罰ゲームだなぁ・・・。
関心した。