アメリカの次の大統領が決まった。
数ヶ月前まで泡沫候補でしかなかったトランプ候補が、大統領に選出されることになった。
身内の多くの共和党議員からも応援されなかった候補が、逆風をものともせず、
あれよあれよという間に、頂点まで登ってしまった。
あれだけ暴言の多い政治素人が勝って、
何十年も政治の中枢にい続けたクリントン候補が負けたということは、
国民は、なんでもいいからとにかく現状を変えてくれということなのだろう。
オバマ大統領が選出された際、初の黒人大統領に多くの人が感動し、
これからアメリカは「Change!」していくんだと涙を流していたが、
実感できるような社会の変化は訪れなかった。
社会の変化どころか、黒人と白人の肌の色を巡る事件は、
今年も連鎖的に大きなニュースになっている。
アメリカ国民は、「理念」としてのオバマに失望し、
「力技」のトランプに期待しているのかもしれない。
だが、いかにアメリカの大統領が日本の総理大臣よりも大きな権限があるといっても、
党内をまとめあげていない政治家1人がやれることには限りがある。
期待はしすぎない方がいい。
そもそも、政治に変えられることには限りがある。
トランプ氏の政治家としての能力以前に、
政治や国家にできることがだいぶ少なくなっている今、
過度の期待は、過度の失望を呼ぶ危険がある。
トランプ氏に期待している人がいれば、
トランプ氏が大統領になることを異様に嫌悪している人もいる。
トランプ氏が大統領になるなら国外に逃げたいと思った人が殺到したのか、
カナダの移民局のホームページがダウンしかけたらしい。
こんな大統領の国では暮らせない。
その発想がもう、「理念」で国をまとめあげているアメリカらしくて、面白い。
ドゥテルテ大統領が就任した際の、フィリピンの売人たちならいざしらず、
殺される危険もないのに、国外移住を考えるとは、さすがアメリカだ。
だが、トランプ氏が国をいい方にすぐに変えることができないように、
国を悪い方にもすぐには変えられない。
焦らなくても大丈夫だ。
トランプ氏が勝利スピーチで言っていたように、
国を二分した選挙の後は、「傷を縫い合わせる」時期だ。
これからの国の縫合作業はうまく進むだろうか。
これだけの僅差で、しかも、多くの人が思ってもいなかった投票結果は、
イギリスのユーロ脱退を巡る投票を思い出させる。
あの時も、僅差にはなるだろうが、脱退はない、と決めつけていた。
そして今、「もう一度、投票をやり直したい」と後悔している人がいる。
アメリカ人も、直前までは、僅差にはなるだろうが、トランプはない、と決めつけていた。
半年後に、「もう一度、投票をやり直したい」と多くの人が後悔していないことを願う。
だが、そんなことは杞憂に終わるかもしれない。
半年前、僕はトランプ氏が大統領になるなんてまったく予想していなかった。
今度の予想もはずれるのだろう。
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