福岡の友達とマンガ「東京タラレバ娘」の話をしていたら、
福岡にも「博多タラレバ息子」がいるという話になった。
「東京タラレバ娘」は、東京に住む30代の女が主人公で、
金もあり、結婚願望もあるにも関わらず、女子会を開いては
「・・・したら」、「・・・してれば」と、
男への文句を言ってばっかりで結婚へ話が進まない女たちを描くマンガのことだ。
その男バージョンが博多にもいるという。
女が男にタラレバ言ってんのに、男まで女にタラレバ言ってたら、全然、事が進展しない。
少子化問題は、この先も解決しそうにないようだ。
「東京タラレバ娘」の作者、東村アキコさんは以前、
「ヒモザイル」という新連載を始めたが、2話目で炎上したために連載が頓挫したことがあった。
自分のアシスタントをヒモ男として、
金は持ってるけど仕事が忙しい女とマッチングさせようという
ドキュメンタリータッチのマンガだったのだが、批判が殺到したらしい。
理由は、専業主婦(夫)蔑視だとかパワハラだとか、いろいろあるらしいが、
あまりよくわからない。
何かが気に食わなかったのだろう。
ただの金持ち女とヒモ希望男の利害の一致。
騒ぐほどのことじゃないし、マンガなんだから、ただのシャレだと思うが、
騒いだ人たちは、「シャレになっていない」と思ったのだろう。
だけど、シャレには色んなタイプがある。
金持ち女とヒモ男の間でシャレが成立していれば、僕はよいと思う。
タレントの毒蝮三太夫は、駅のホームで友人の談志師匠と電車を待っている時、
電車が入ってきたタイミングで、談志をホームに突き落とそうと背中を押した。
談志は、とっさに柱に捕まり、クルッと回って、ぎりぎりでホームに落ちることを免れ、
「ばかやろう!!もし落ちて死んだら、どうすんだ!!」
といきりたったが、その言葉に、毒蝮は、
「シャレのわからねえ奴だって言ってやる」
と返したという。
背中を押したのは、シャレ。
それで死んだら、シャレがわかってなかったってこと。
芸人なら、シャレをシャレにしなくてはならない。
シャレにするためには、落ちてはいけない。死んではいけない。
死んだら、シャレにならない。
それは、芸人の立川談志と毒蝮三太夫の間だから成り立つシャレだ。
他の人との間でそんなシャレをしても、ケンカになるか裁判になるだけだ。
マンガなどのオープンな媒体でやってしまったら、炎上するかもしれない。
「ヒモザイル」の話は、マンガというオープンな媒体でのシャレに、
読者がどれほど首を突っ込んでいいかという話なのだが、
多分、「東京タラレバ娘」の読者は、その企画を笑えるシャレとしか思っていなかったと思う。
東村アキコのマンガを楽しむということは、彼女のシャレを楽しむということだ。
騒いでいた人は、多分、熱心な読者ではない。
なぜ、好きでもないマンガに首を突っ込むのだろう。
好きでもないマンガのシャレなんてわかるはずがない。
マンガ雑誌をめくれば、ほとんどのマンガのシャレが「?」だ。
シャレは、流れを追ってないと、笑いどころがわからない。
だから、「シャレになってねえんだよ!」と怒っていいのは、読者だけ。
先ほどのホームでの話でいうと、怒っていいのは押された談志師匠だけだ。
でも、談志師匠は怒ったりしない。
談志師匠は、毒蝮三太夫のシャレがわかると思っているし、
もし怒ってしまうと、「シャレのわからない奴」だと思われてしまう。
談志師匠が「シャレのわからない奴」であるはずがないし、
毒蝮師匠は、相手をみて、シャレをやっている。
シャレは、常に、相手がわかってくれるだろうという期待のもとに、なされるのだ。
「ヒモザイル」の件も、
このシャレをわかってくれるだろうという期待のもとに描かれているわけで、
東村アキコのマンガで笑ってきたファンなら、その期待に応えて、
そのシャレをちゃんとわかってやりたいと思うものなのだ。
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