今年のプロ野球は「コリジョンルール」というものが導入されて、
本塁でのクロスプレーが減った。
来年からは、本塁以外での、「併殺崩し」と言われる接触プレーも禁止になるらしい。
接触プレーを減らしているのは、選手のケガを減らすためだ。
以前は、完全にアウトのタイミングで、外国人ランナーが無駄にタックルするなどして、
捕手が脳しんとうを起こす場面も多々あった。
そういう無駄なケガを防ぎたいのだ。
ただ、この接触プレーを減らす流れには反対派も一定数いて、
そういった危険なプレーこそがスポーツの醍醐味でもあるというのだ。
確かにスポーツから危険を取ったら、面白さは半減する。
特にチームスポーツは戦争の相似形でもあるので、
危なくないと、見ていても面白くない。
野球はあんなに硬い球を人に向かって投げ込むから面白いのであって、
あれがスポンジボールだったら、誰も見ない。
アメリカの四大スポーツと言われる、野球、バスケット、アフメト、アイスホッケーは
野球を除いて、いずれも大男たちがぶつかりあう危険なスポーツで、
アイスホッケーなんか、毎試合、乱闘があり、
人を殴ること込みで、興行になっている。
サッカーでは相手にスライディングすることを「削る」といい、
試合中、同じポジションの選手は「削り合い」をして戦っている。
ただ、それは、切り傷、かすり傷、打撲の応酬であって、
選手生命を奪うようなプレーではない。
マナーの範疇なのだ。
だが、野球のスライディングやタックルは、
時に選手のシーズンをまるごと奪うことがある。
大怪我につながるプレー。
それはひとえに、野球が接触のゲームではないからだ。
離れたピッチャーとバッターが球を投げ、打ち合う野球では、
接触の場面が少なく、接触のマナーが育っていない。
どこまでのタックルが敬意で、どこまでのスライディングが悪意なのかのか、了解がとれていない。
みんな、なんとなくで、やっているのだ。
それに、野球が非対称的なゲームだという理由もある。
接触型ゲームでは、「削ら」れたら、「削り」返せばいい。
同じポジションの選手は、攻守が逆転するだけで、「組み方」は変わらない。
攻撃の選手を守備側が削り、攻守が変われば、同じように守備側が攻撃の選手を削る。
削ったら、後で、削った人から削られる。
きちんと、「目には目を」が機能するような、「組み方」になっている。
しかし、野球はチーム全体として対称なだけで、個としては非対称にできている。
チームの4番が相手のエースから死球をくらったら、
次に死球をくらうのは、相手のエースではなく、相手の4番なのだ。
チームのキャッチャーが相手の外国人にタックルでふっとばされたら、
次にぶっ飛ばされるのは、その外国人ではなく、相手のキャッチャーなのだ。
やった人がやられるわけではない。
チームとしては「やられたらやりかえせる」のだが、
「個」としては、「やっても、やりかえされない」。
その安心感が、度を超えたタックルやスライディングにつながっているのかもしれない。
現役時代、天才打者・落合博満は、相手ピッチャーから頭に死球をくらってもプレーを続け、
次の打席で、ピッチャーの横を抜くセンター前ヒットを打った。
そして、次の打席では、先の打席での失敗をもとに微調整をして、
ちゃんと、ピッチャーの大事な肩に強烈な打球を打ち返して、
ピッチャーを病院送りにしていた。
そういう対称的な「ぶつけあい」ができるのは、一部の天才だけだ。
ほとんどの選手には、難しい。
個々の能力で難しいことは、ルールとして組み込むしかない。
危険を回避する最近のルール改正には、おおむね、賛成している。
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