電車に乗っていると、よく、自分が乗っている車両だけ、急に、
どこか知らない無人島にタイムスリップしたらどうしよう、と考えてしまう。
どこに飛ばされるかにかかわらず、
とりあえず、どの人と仲間になれそうか、
車両に乗っている人達の顔を見渡しておく。
急に車両がタイムスリップしたとしたら、一番不安なのは、
今しているコンタクトがいつまで持つかということだ。
僕は、目が悪い。
無人島でコンタクトが落ちてしまうと、
とたんに仲間の中で一番の役立たずになってしまう。
今日持ってきたかばんの中にメガネは入っていないし、
今、目に入っているコンタクトは2ウィークのラストの方だから、
そう長くはもたない。
頑張って落ちないように気をつけたとして、
あとどのくらい痛み無しでいけるだろうか。
2ウィークのコンタクトを2ウィーク以上つけ続ける恐怖が、
裸眼で過ごす人たちに伝わるだろうか。
一刻も早く無人島から帰還できるよう、頑張りたい。
コンタクトがないと何も見えない。
そこに、生物としての弱さを感じる。
ある調査では、視力が1.0以下の子どもは、
ここ30年で2割ほど増えている。
メガネもコンタクトもない時代、
視力が0,1ない人は、そんなにいなかったはずだ。
歴史小説に、メガネキャラが出てくることは滅多にない。
メガネもコンタクトもない時代には、
視力が悪いってことが、身体的障害とみなされていたのだろう。
つくづく現代人でよかったと思う
(現代人だから、目が悪いんだけど)。
坂本龍馬は、少々、眼が悪かったらしく、
脱藩していた時に、目を細めて、遠くから来る役人を見つめていた。
(「ワシャ、近眼じゃきぃ」と『おーい、竜馬』の中で言っていた)
ただ、悪いといっても、
夜中にネトゲもソシャゲもなやらなかった竜馬は、
0,3くらいはあっただろうと思う。
敵との立ち会いで、問題なく、相手の太刀筋を見ていたし、
なんといっても、北辰一刀流の免許皆伝だ。
悪いといっても、そんなに悪くない。
それに比べて、僕は、ネトゲ、ソシャゲどころか、
子供時代にゲームボーイすらやらなかったのに、視力が0,1ない。
コンタクトをせずに出かけようとすると、
平気で、妹のローファーを履こうとしてしまい、
なかなか足に入らないことで、初めて間違いに気づくほどの近眼だ。
生物としてのディスアドバンテージ。
無人島では、みんなに迷惑かけないためにも、
なるべく、コンタクトが落ちる前に、帰還したい。
その前に、なるべく、タイムスリップに巻き込まれないように、
気をつけて電車に乗りたい。