1/7 敬語を話さない人

30過ぎた女性なのに、まったく敬語を話さない人に会った。
しかも、茶道の世界で。
外国に生まれて、外国で教育を受けたのなら話もわからなくもないが、
日本生まれ、日本育ちの、純日本人だ。
これまでどうやって行きてきたのだろう。
しかも茶道の世界で。
目の前の高齢のお茶の先生にタメ口で話しかけている。
一瞬にして、場が凍っていくのを感じる。
これ、やばいやつじゃん・・・。

敬語は、日本社会で生きていくための「必須リテラシー」だ。
使いこなせて当然であり、使いこなせないと問題が起こる。
必須だからこそ、その社会の外にいる人からすると、
高いハードルであり、日本社会に入る際の壁になっている。
多くの外国人は、敬語でつまづいている。
しかし、一度身につけてしまえば楽なもので、
敬語で話していれば、お互いの立場がはっきりわかるし、
コミュニケーションが円滑に進む。
必須リテラシーの存在は、日本社会に限らず、どの集団でも同じで、
大企業には大企業の「リテラシー」があり、
美術業界には美術業界の「リテラシー」がある。
身につければ楽に生きれるが、身につけなければ問題が起こる。
逆に、身につきすぎると、
その集団を離れて生きていけないという怖さもある。
公務員のリテラシーが身につきすぎた人は、
中々簡単に、非公務員集団には入っていけない。

日本社会で必須とされている敬語を放棄したその女性は、
毎度毎度が勝負なんだと思う。
日本社会においては、敬語が「通行手形」みたいになっているので、
持っていれば、たいがいの関所はスルーできるが、
持っていなければ、毎回、役人に止められる。
そして、毎回、なぜ自分は手形を持っていないか、
なぜ自分は手形を持っていないにも関わらず、そこを通れるのか、
きちんと説明して、相手を納得させなくてはならない。
多くの人は、それが面倒だから、
敬語というリテラシーを早々に身につける。

場の空気が一気に下がっても気にしない彼女は、
会の最後まで、先生に、タメ口で通した。
最初は表情の硬かった先生も、
お酒の力もあってか、彼女のタメ口をなんとも思わなくなったようだった。
彼女は、関所を通れたのだろうか。
先生を、納得させられたのだろうが。
その答えは、酔いの冷めた明日以降にわかるだろうが、
今後も、彼女に茶道での「いい話」は、回ってこないだろう。
集団の中には、その先生以外にも、何人も関わっている大人たちがいる。
その大人たちを次々と納得させないと、集団では認められない。
乗り越えるべき関所は、まだまだ山のようにあるのだ。
でも、これからも、是非、タメ口で、頑張って欲しい。
援護はしないけど、是非、頑張って欲しい。

 

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