タイムカードが嫌いだ。
正確にいうとタイムレコーダーが嫌い。
あんなものがあるから、
僕らは時給の計算を細かくして、
1分当たりの自分の価値を考えてしまう。
あんなものがあるから、
お役所が1分の漏れなく
税金を徴収しにやってくる。
全部、たいがいでいいのに・・・。
そのことを芸術大学に進んだ友達に話すと、
アートに昇華しろという。
あーと?
はて、どうすればいいのだろう。
彼女は、そのタイムカードに対する気持ちを
形にするのだと言う。
僕は、考える。
オッケイ。
僕は決めた。
金属バットでタイムレコーダーをボコボコにする。
ボッコボコだ。
もう、タイムカードも差し込めない。
針の止まったボコボコのタイムレコーダー。
作品名は、「フラワー」だ。
説明文には、こう書こう。
時は、ひとそれぞれ感じかたが違う。
一律な時間なんてない。
ひとそれぞれ感じかたは違うけど、
どれもみんな綺麗だね。
それなのに僕ら人間は
どうしてこうも時給を比べたがる?
ひとりひとり違うのにその中で
一番になりたがる?
初めての作品にしては、なかなかいい案だ。
東京現代美術館に置いてあれば、いっぱしに見えるだろう。
彼女に、その案を報告する。
彼女は、うんうんと聞いてくれ、
「そういうことじゃないの」
と、電話口できつく言う。
・・・。
ふむ。
アートとは、なかなか、難しい・・・。
壊す前に電話して、よかった・・・。