ペンを片手に本を読むことがある。
ペンの色を変えながら、線を引いたり、囲んだり、コメントを書いたり。
線を引く時は、必要以上に線を引く。
ここは別にいいかなぁ、と思っても、一応引いておく。
後の自分がどう感じるかは今の自分にはわからない。
線を引くべき箇所がいくつもあるのに手元にペンがない時は、
喉に魚の骨がささったようで苦しい。
あそこも、あそこも、あそこも、まだ線、引けてない。
だから、必ずバッグにはペンを忍ばせている。
どんな時でもどんな場所でも、線をひくのに困らないように。
ああ、ここ大事なこと言ってる。
ああ、やっぱこの人、いいこというなぁ。
まだインクの匂いがする新しい文庫本に、線が引かれていく。
これは、柳田国男が言ってたこととつながるのかな。
これは、日本固有の問題かしら。
ところどころ糊でくっついた新しいページに、
コメントを書き込んでいく。
そして、はっとする。
あ、ここ、本屋だ。
あ、これ、売りもんだ。
なんで、売りもんに線引いてんだ。
そもそも買いたくないから本屋で読んでんのに、
なんで線引いてんだ。
やっちまった。
やっちまった。
税込み640円。
640円か。よかった。
誰かの分厚い全集じゃなくてよかった。
文庫本で、よかった。
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