ある時、千利休の屋敷に素晴らしい朝顔が多数咲いたと、
噂になりました。
あまりの評判なので、秀吉は、朝顔を見ながらの茶の湯を
利休に所望します。
当日、秀吉が茶室に着いてみると、
あるはずの朝顔がありません。
庭には、一面に開いていた朝顔がすべて切り落とされ、
つただけが無残な姿で残っていました。
怪訝な顔をして秀吉が茶室に入ると、
床には見事な朝顔が、一輪だけ挿してありました・・・。
これは、利休の美意識が極端に振れていることを伝える
エピソードで、ほるほど、面白い。
時代は下って、西暦2016年。
個人的に長かった冬に終わりを告げる桜が、
福岡の街にも咲き始めています。
満開までもう少し。
五分、六分咲きといったところです。
その中で、たまに通る有名予備校の桜だけは、
満開を通り越して、もう散り始めています。
桜の種類には明るくないので、何ザクラなのかは
よくわからないですが、
ソメイヨシノやシダレザクラよりは開花時期が
よっぽど早いようです。
予備校の門のすぐ側に植えられたこの桜は、
3月下旬から4月にかけてではなく、
受験の合格発表に合わせて3月中旬に花開いたのでしょう。
足元に、花びらがヒラヒラと舞い落ちます。
他に先立って咲いた桃色の桜は、
志望校に受かって「桜が咲いた」と喜ぶ子にも、
留年が決まって「無残に散った」とうつむく子にも、
等しく暖かく花開いたことでしょう。
いやはや。
子どもたちのために、花の開花時期を配慮している
学習塾が、日本の他にあるでしょうか。
茶の大家が遠い昔に自刃し、家庭から床の間が消えても、
相手を慮る気持ちは、日本から消えていないようで、
私は、なんだか嬉しく思います。
なんだか、じいさんみたいな文章になってしまった・・・。
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