街なかで中国人観光客が信号を待っている。
両手にドラッグストアの袋をぶらさげて、
これからビックカメラにでも行くつもりなのか。
家族で「爆買い」でもするのだろうか。
はて。
「爆買い」という言葉には、嫌味がある。
相手が、成金の、礼儀のなってない、
遅れてきた中産階級の中国人だから、
「爆買い」などと暗に貶めて、溜飲を下げているのだ。
もし、これがフランス人だったら、
「爆買い」とは言わなかったろう。
相手が、成金の、礼儀のなってない、
遅れてきた中産階級だと思ってるから、
「爆」なんて言葉を使うのだ。
「爆」には、品が欠けている。
爆笑している人は、品がない。
爆弾も爆烈も爆破も、「爆」には、
一瞬のエネルギーはあるが、
後先考えない暴力的なイメージがある。
今は「爆買い」なんて言って揶揄している日本人も、
ほんの数十年前までは、
パリでブランドものを買い漁ったり、
ニューヨークでアメリカ人の大切なビルを買ったりして、
世界中に、成金ぶりを見せつけていた。
日本には届かなかったかもしれないが、
多分、フランスでは、ブランド物を買い漁る日本人を
「爆買い」と報道していたのだろう。
フランス語だからニュアンスはわからないが、
「猿買い」とか「下品買い」とか言われていたのだろう。
そんな洗練されたように見えるフランスも、
16世紀にイタリアから料理文化が入ってくるまで、
手づかみで肉を食べるような野蛮な国だった。
イタリア人は、フランス人の無作法を、
指をさして笑ったことだろう。
そんな(今の地図区分でいう)イタリアが
歴史上最も輝いていたローマ帝国時代に公用語として
使っていたラテン語は、
語彙の多くをギリシャから拝借していた。
ラテン語には、思想を表すワードが足らなかったからだ。
当時のギリシャの哲学者たちは、
勃興していく成金のローマを横目に、
「金はあるが、学のない奴らだ」と思ったことだろう。
そのギリシャは現在、経済が破綻しかけだ。
悲しいことに、哲学も破綻したままだ。
いつの時代も、都会モンは田舎モンをばかにする。
でも、都会モンも、いつかの田舎モンだ。
田舎モンも、いつの日かは都会モンだ。
そこに、大した違いはない。
たくさん買って経済を潤してくれてるんだから、
「爆買い」ではなく、「超買い」くらいでいいだろう。
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