深夜、ジョギングをしていたらノッてきたので、
ずいぶん遠くまで走ってしまった。
見慣れない景色を横目で見ながらハアハア言ってると、
でっかい門の家を見つけた。
門には監視カメラがついていて、物々しい。
ここは裏門で、敷地はずっと向こうの角まで続いている
らしく、大きな庭の松の木が塀の上から見下ろしてくる。
「これ、絶対、親分の家だよ」
独り言なのに、ヒソヒソ声になる。
こんな遅い時間にウロウロしていたら、
下っ端がでてきて、どやされるかもしれない。
シャーッと駆け足でそこを去り、
当てもなく走り続けてると、その家の一本表の通りに
出てしまい、気づくと親分の家の表門の前だった。
自動でこちらを向く監視カメラに、ひえーっと思い、
表札に目をやると、「県知事公舎」と書いてある。
なんだよ、親分の家じゃねえじゃん。
びびって損した。
紛らわしいカメラつけてんじゃねえよ。
怖い人が出てくるかと思ったじゃんかよ。
まあ、でも、どっちにしても同じようなもんだ。
公式の怖い人か非公式の怖い人かの違いだ。
どっちにしても怖い人だ。
どっちにしても、近寄らないに限る。
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