福岡に友達が遊びにきた(1)。
「このバス、しょっちゅう走ってるね」
「西鉄バス?天神から博多まで100円で行けるしね」
(赤信号で、エンジン止まる)
「ん?止まったね」
「信号だよ。最近はエンジンも止まるんだね」
「静かだね」
「誰もしゃべんないもんね」
「こういう時は、話さないのがマナーなのかな」
「しゃべってもいいと思うよ」
「でもみんな、いやに静かだよね」
「静かすぎるよね。エンジン切らなくていいのに」
「エコなんだよ」
「もうエンジンの構造がそうなってんのかな」
「ちょっとぐらい雑音があったほうがいいのにね」
「小声になっちゃうよね」
「別にエンジン止めてもいいけどさ、その間、
エンジン音だけ鳴らしてくれればいいのに」
「音だけ?」
「ブロロロローって。録音のエンジン音をさ」
「わざわざそんなことやんないよ」
「わかんないよ。
この国は、トイレに音姫とかつける国だからね。
何やったって不思議ではないよ」
福岡に友達が遊びにきた(2)。
天神の信号の角におばちゃんが座っている。
「あそこ、誰か座ってるよ?」
「ん?ああ、あれは、あれだよ、天神の母」
「天神の母?」
「博多の母だったかな?」
「占い師?」
「そうそう」
「人気あるの?」
「結構あるよ。週末、行列できてるもん」
「タロット?」
「タロットじゃないでしょ。
薄いベール被ってないし」
「最近のタロットは、ベール被ってないよ。
それは、現代のタロットを知らない人の考えだね」
「現代のタロットに詳しいの?」
「まったく知らない」
「僕もよく知らないけど、
どうみてもあれは、タロットじゃないね。
タロットはインドアなんだよ。
外だとカードが飛ぶからね。
ストリート系じゃない」
「路上派じゃないんだ?」
「そう。ゆずじゃない」
「スタジオミュージシャン」
「そう。スタジオミュージシャン」
「せっかくだから、占ってもらえば?」
「やだよ」
「なんで?」
「占いなんて邪魔だよ。
適当なこと言って、介入してこないでほしい」
「男だね」
「占い好きの女とは違いますよ」
「当たること言ってくれるかもしれないのに」
「それは、当たってんじゃなくて、
占いの方に自分が寄せてるだけでしょ」
「わかってないなあ」
「どうせ天神の母に占ってもらっても、
朝になったらめざましテレビの占い見るんでしょ。
そんで、会社終わったらコンビニ寄って、
ananの星座占い見るんでしょ」
「わかってないなあ」
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