7/20 ヤクゾン

「役得」という言葉がある。
仕事や役割についてくるラッキーなおまけのことだが、
「役得」の 逆の「役損」ということだって多々ある。

以前、はるばるイスラエルから来た人々を
東京から広島まで添乗したことがあった。
彼ら同様、僕も初めて訪れる都市がいくつかあったのだが、
こちらは仕事のため、景色に感動している時間も、
土地の人の暖かさに触れている暇もない。
時計を見て、渋滞を考えて、誘導するだけの旅程。
まったく楽しめないのに、視界には入ってくる情景。

こんな形で見たくなかった白川郷。
こんな形では参りたくなかった日光東照宮。

「初めて」はいつだって特別なものだ。
ファーストインプレッションが全てを決めることだってある。
大学の時初めて落語を聞き、
その後、色んな人の落語を聞いたが、
初めて聞いた噺家の噺にまさる感動は、未だにない。
最初の出会いは、特別なのだ。
僕は、最初の出会いで、「一目惚れ」する方の人間なんだ。

多分、今後、華厳の滝を見にいく機会があったとしても、
「 おお!」と思うことはないだろう。
だって、僕、もう、見たからね!
イスラエル人が落とした落としたって騒いでたスマホ
探すために下ばっか見てた時、横目に
華厳の滝のしぶき、見えてたからね!
「水の中に落ちてたら、絶対見つかりませんよ」
っていう係の人の声の後ろでドドドドッていう
でかい音、聞こえてたからね!
もし万が一また行くことがあっても、あの時の
「ああ、ポケットに入ってたぁ」って言ったイスラエル人の
おばちゃんの悪気なさそうな顔しか思い出さないからね!
もう、僕、「華厳の滝」ヴァージンじゃないから。
一緒に来た友達に
「スマホ水の中に落としたら、一貫の終わりだから気をつけてね」
って言うから。
「経験者は語る」からね!

 

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