毎日暑いので、寒かった頃の話を。
冬の京都にいた頃、仕事の休みに近くの本屋さんに行くと、
「改装のため店休」の張り紙がドアに。
さて、じゃあ今日は何しようと考えながら歩いていると、
京都駅に着いてしまったので、
とりあえず京都を離れてみるかと、
どこに行くかも考えず、ホームに入ってきた鈍行列車に乗りこみ、
どこか適当なところで降りればいいかと、
本を読み、車窓を眺めていたら、
福井駅に着いてしまった。
特に福井に用はなかったけれど、
他の街に行く用もなかったので、
そのまま福井駅で降りると、2月の福井は、雪国だった。
京都の、近所の本屋に行くつもりで外に出た僕の足元は、
見るからに寒そうなくるぶしソックスと
すでに雪が染みてきている布地のスニーカーで、
あきらかに、場違いだった。
駅を出た、道路越しのバス停には女子高生が4人バスを待っていて、
全員、制服なのに、長靴を履いていた。
隣にいたおっちゃんに、
「高校生が、長靴履くの、普通っすか?」
と聞くと
「普通やろ」とつぶやいて、おっちゃんは、雪をかいていた。
駅前のバス停には、緑色のスコップが設置してあって、
「ひとかき運動」という標語が、掛けてあった。
「バス待つ間に、このスコップでひと雪かいといて」
ということらしい。
待ってる人の時間をもらってでも、雪をかいてほしいくらい、
福井の雪は、次から次から、地上に降りてきていた。
「さっきまでいた京都とはえらい違いだな」
そうつぶやく吐息も真っ白だった。
日本は、ちょっと移動すると、全然違う表情を見せる。
もしかしたら、今暑いのは、ここ東京だけかもしれない。
ちょっと行くと、雪が舞い散っている街もあるのかもしれない。
そんなことを書いてると、なんだか涼しい気分になってきた。
納涼。
雪の話を書いて、勝手に涼しくなる。
元手のかからない、言葉の打ち水、言葉の風鈴だ。
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