夏に入る前、喉が少し痛かったので、
風邪の前兆かもしれないと、マックスバリュにヴィックスを買いに行った。
ヴィックスは喉に効く。
7個いっぺんに舐めたら、喉痛が治ると言われている。
マックスバリュでヴィックスを買い、駅に向かって歩いていたら、
ビルのスクリーンに、ゾンビ映画の特報が流れていた。
最近、ゾンビの元気がいい。
映画にしてもマンガにしてもゾンビ界隈は景気がいい。
元々日本は火葬なので、
土葬が生みだすゾンビがピンとこないはずなんだけど、
ウイルス感染がもとで皆がゾンビになっちゃう、という日本向けの設定が
日本人にもソンビ映画をピンとこさせているらしい。
キリスト教徒は、火葬を嫌う。
火葬すると、肉体がなくなるからだ。
キリスト教では最後の審判でキリストが再びやってきて
大天使ガブリエルがラッパを吹くと、
皆、天国行きか地獄行きかの裁きを受けるので、
肉体は焼きたくないらしい。
むかし、ある年配者が、そっと教えてくれたことがある。
「天国と地獄ってあるじゃない?」
「はい。黒澤明の」
「違う。本当の、天国と地獄」
「ああ、はい。死後の話」
「そう。天国と地獄ってのはね、実は、同じとこなのよ」
「へえ、そうなんすか」
「そう。同じなの。
でもね、天国にはいい人しかいないの。
逆に、地獄には悪い人しかいないのよ。
それだけの違いなの。
だから天国も地獄も、空間としてはこの世と同じなの」
「へえ、そうなんすか。何か教訓めいた話ですね」
「でしょ。だから、死んだ後、
悪人だらけの世界で暮らしたくなかったら、
この世で常に”良く”あるようにしなさい」
「了解っす」
天国と地獄とこの世は空間としては同じなのか・・・。
死んでもあの世は、またこの世みたいな感じだったら、
あの世にも、マックスバリュがあるってことだろうか。
死んだのに、また、マックスバリュで買い物して過ごすのかと思うと、
一気に生活感が増して、死後に希望がなくなるが、
この宇宙がそう出来ているとするなら、それもまた、しょうがない。
死んだ後、いい人しかいないマックスバリュと、
悪い人しかいないマックスバリュ、
どっちに行きたいかと言われたら、
当然僕は、いい人のいるマックスバリュに行きたい。
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