
あることを集中して考えていて、
 ずり落ちて来たメガネを中指で押し上げようとしたら、
 メガネはかけていなかった。
 ドンマイドンマイ。
 そういうことはよくある。
真夏に外を歩いていて、
 落ちて来た帽子のひさしをあげようとしたら、
 帽子はかぶっていなかった。
 そういうこともよくある。
メガネをしていた時のイメージ。
 帽子をかぶっていた時のイメージ。
 それを更新せずに生きていると、
 間抜けなことになる。
 もうおばさんなのに、20代の格好をしている人や
 もう政治家ではないのに、政治家みたいに振る舞う人は
 イメージの更新が必要なのかもしれない。
 そうしないと、間抜けなことになってしまう。
家で料理をしていると、メガネが落ちて来た。
 間抜けなことにならないように、
 ちゃんとかけていることを確認して、メガネを押し上げる。
 ふと、横を見ると、洗い物が残っていたので、
 洗い物も片付けるか、と長袖の腕をまくりあげようとしたら、
 上半身裸で、何も着ていなかった。
 まくりあげる袖がない。
 ドンマイ・・・ドンマイ・・・。
 やり場のない気持ちがグッとこみ上げてくるが、
 この気持ちの名前を、僕はまだ知らない。

 
 

コメント