セミが鳴いている。
オスだ。
捕まえようかな。
力いっぱい鳴いているのは、生殖活動のためであって、
メスを呼び寄せるために鳴くのだ。
だったら、セミが力の限り鳴くのは、
嫁に逃げられた人間のおじさんが、夜の店で、
お姉ちゃんたちを必死に口説いてるのと、同じようなもんなのかしらと思う。
女のために、力の限り、粘る。
先日、繁華街で、キャバクラを出た後も必死に、
「うちの金魚見においでよ。おっきいよ」と、女性を口説いていたおじさんを思い出す。
そう考えると、必死に鳴いているセミを捕まえるのは、
何か違うような気もしてきた。
放っておいてあげよう。
一般的に、セミは「儚い命」というけれど、地上に飛び出して来る前、
土の中で6,7年は生きているので、
そんなに短い命、でもないらしい。
たんに、地上で、交尾に費やす時間が短いというだけだ。
生命が終わるまでの最後の2週間、声の限りに鳴いて鳴いて、
発音筋を懸命に振動させて、命を次世代につなごうとするセミたち。
そう思うと、夜の店で、キャバ嬢を口説いているおじさん達とは、
基本的に、切実性が違うようにも思う。
セミに比べて、おじさん達は、不真面目だ。
セミが種類によって違う鳴き方をするのは、日本人には常識だが、
アメリカには、日本にいない、「17年ゼミ」というセミがいるという。
毎年、地上に出てくるのではなく、17年ごとに出てくる。
ぴったりと、いっせいに。
「17年ゼミ」とは別に、「13年ゼミ」という種類もいて、
こちらも、息を合わせたように、13年ごとに地上に出てくるらしい。
この17とか13とかが、なぜか素数で、それが、どうにも興味深いといって、
「素数ゼミ」を研究している人が世の中にはいるという。
なんだか、変態の匂いがする。
そんなセミの研究者に比べると、キャバクラ嬢のお尻を追い回しているおじさん達は、
生き物の本能に従って、日々を、健全に生きているだけのように思えてくる。
不思議。
世のおじさん達は、セミに比べれば不真面目だが、
「セミ研究者」に比べれば、健全だということだな。
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