9/26 大人のシンデレラ

ツタヤで借りたDVD「シンデレラ・マン」を見た。
ラッセル・クロウが主役を演じる、ボクシング映画だ。
タイトル通り、主人公が「シンデレラ」のように駆け上がっていくサクセスストーリーだが、
ガラスの靴の代わりに、薄汚れたボクシンググローブが出てくる、
大人のシンデレラ・ストーリーだ。

時は大恐慌時代。
職にありつくのもやっとの生活をしている主人公は、
妻と子どもたちの生活のために、リングにあがる。
「ロッキー」にしても、「ミリオンダラー・ベイビー」にしても、
映画の中のボクサーは自分自身のために戦うのが当然だし、
「あしたのジョー」にしても「はじめの一歩」にしても、
漫画の中のボクサーも自分自身のために戦うのが当然だが、
「シンデレラ・マン」の中の主人公は違う。
家族のために、リングに上がる。

映画終盤、チャンピオンに挑戦することになった主人公は、記者会見の場で、
「何のために戦うのか」と聞かれ、
一言、「ミルク」と答える。
まだ小さい子どもたちを養う父の短い回答。
日本でいうと、「米」のためだろうか。
米のために相撲大会に出場した、マンガ「ドカベン」の青山くんを、ふと、思い出す。
子どもたちのミルクのために戦う心優しきシンデレラマンは、
次第に、大恐慌に苦しめられている市民の希望となり、
多くの声援が彼にむけられるようになる。
家族のために戦っていたつもりが、いつのまにか多くの人のためになる。
それはマンガでも他の映画でも同じ。
マンガ「はじめの一歩」の中で王者として君臨する・鷹村も、
口では「自分のため」といいつつ、
恩人である会長のためにベルトを持ち帰ろうとするし、
映画「ザ・ファイター」の主人公も、自身のために戦いつつ、
同時に、兄の名誉のためにも、戦っている。
現実世界ののボクサーたちも、口では自己顕示欲をむき出しにしているが、
リングサイドにはいつも、献身的な妻や息子思いの父親が座っている。
自分のために頑張っているつもりが、家族や見ている人のためになる。
じぶんのためか、人のためか。
「ミルク」のため。
でも、本当はそうじゃない。
何のためかは、いつも、一言では言いきれない。

 

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