3/7 友達申請



SNSが苦手だ。
どう扱っていいのか全然わからない。
扱い方はわからないが、一応現代人なのでアカウントを開設していると、
知りあいから『友達申請』というものがやってくる。
この申請が来るのは、たいていそれまで気軽に会える関係だったのに、
僕か相手のどちらかが街を離れることになって、それまでのように頻繁に会えなくなるような時だ。
「友達」というものが何かはよく分からないけど、
「友達申請」を送ってきた相手とはすでに何度かお酒を呑んだり、話したりしたとこがある。
まあ、正面切って”友達”とは言わないけど、”友達みたいなもん”だ。
それなのに、そこにわざわざ 「申請」って必要かい。
「承認」って必要かい。
そう考えだすと、送られてきた「友達申請」を「承認」するのが何だかしゃくに思えてきたので、
そのままなにもせずに放置しておく。

それから数ヶ月が経ち、放置していたことなど忘れた頃にその”友達”に再会し、開口一番言われる。
「なんでお前は、『友達承認』しねえんだよ!」
それまで気づかなかったが、友達を「申請」したのに「承認」されないということは、
何かを否定された気分になるようだ。
別に相手を否定したり拒否したりしたつもりもないので、
「フェイスブックに頼らなくても、僕らはつながってるだろ」

と、もっともらしいことを言ってみる。
とっさに出た言葉にしては、なかなか核心をついているが、
自分の芝居染みたセリフに、にやついてしまう。
「いいから、『承認ボタン』押せよ!」
僕のにやつきにいらついた相手は、その場で、僕のスマホをフェイスブックにつなぎ、
『承認ボタン』を押した。
彼は一方的に、彼自身を「承認」し、
僕らは晴れて「友達」になった。

ぼくと”正式に”友達になった彼は今後、
まったくSNSを触らない僕から一度も『いいね!』も『
コメント』ももらうことなく、
年に一度くらい、まったく新しい情報が更新されない僕のホーム画面
を覗くのだ。
そう、僕は彼の368番目の友達で、彼は僕の23番目の友達だ。
トモダチって一体なんだろう・・・。

 

 

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