銭湯が好きだ。
昔からある街の銭湯も好きだし、
いくつか違うタイプの湯があるスーパー銭湯もいい。
裸は雄弁だ。
普段は服で隠して素知らぬ顔をしてみても、
全部脱いでしまえば、嘘はつけない。
そんな銭湯に奇妙な若者がいた。
熱めの湯に浸かりながら、分厚い本を読んでいる。
それも「哲学史」の本だ。
47℃の湯の中で哲学史が頭に入るのだろうか。
更に奇妙なことに、彼はお湯を出るとすぐに、
目の前の水風呂に、ジャボンと頭まで浸かっている。
もちろん、哲学史を持った右手は水につけてない。
そして、また47℃の湯に戻って、本を読み始める。
じっと見てると、一定の時間をおいて
お湯風呂、水風呂、お湯風呂、水風呂を何度も繰り返している。
古代アテネにそういう訓練法があると本に書いているのだろうか。
そういえば、古代アテネの哲学者・ディオゲネスは、ずっと樽の中に住んでいたという。
哲学をやるやつも、哲学を学ぶやつも、謎だ。
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