あまり周りにいない苗字で生きている。
会う人会う人に、「珍しいですね」「出身地には多いんですか?」と聞かれる。
珍しい名字の人あるあるの一つで、
居酒屋さんや美容院に予約の電話を入れる際、
必ず聞き返されるということがある。
何度も聞き返され、なかなかちゃんと聞き取ってくれないので、
大学を出た頃から、偽名を使うようになった。
電話口で聞き直しされずにすむように、
普段から皆が聞き慣れている苗字をよく使う。
石川とか宮沢とか山下とか、馴染みのある苗字。
世の石川さんは、ありふれた苗字でつまんないなあと
思うこともあるかもしれないが、
居酒屋の予約なんぞでまごつかなくていいだけ、いい。
聞き返されることもなく、ちゃんと一発で、
8時に4名で予約が取れる。
友人と予約時間に居酒屋に着き、店員さんに微笑みかける。
「8時に4名で予約した石川です」
「石川様ですか・・・?
えーっと、ちょっと待って下さいね」
どうやらリストにないらしい。
それは困る。これから違う店を探すのは嫌だ。
「あ、もしかしたら、この西川がお客様のことかと・・・」
「そうです、そうです、西川です。
8時に予約した西川です。」
石川なんて偽名まで使ったのに、
相手にちゃんと伝わっていなかった・・・。
悪かったのは聞き慣れない名字じゃなくて、
僕の滑舌の方だったなんて・・・恥ずかしい。
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