象のはな子が死んだ。
戦後初の象としてタイから連れてこられ、
移動動物園として東京以外にも赴いたことで、
多くの人の記憶に残っていたようだ。
僕はペットも飼ったことがないので
動物に涙したことはないが、ニュースでは、
親の葬式でも泣かなかったというおじさんが泣いていた。
犬や猫ほどなつかない(そもそも檻の中の)象を
どうかわいがったのだろうか。
本来群れで暮らすはずの象が一頭、
檻の中にいる姿に何か重ねたのだろうか。
動物の死に泣くといえば、豚のPちゃんを思い出す。
命の大切さを教えると称して、
小学生に豚を育てさせた後に食べるという
物議をかもしたこの授業は、結局、食べずに終わり、
ペットとしての動物と食用の動物は違うってことを鮮明にした。
名もない豚は容赦なく食べるが、名前のついた豚は食べれない。
人間は矛盾に満ちている。
そういえば、映画「生きてこそ」では、
雪山で遭難して食料が底をついたラガーマン達が、
どうしようもなくなった末に人肉を食べて生き延びる。
彼らは宗教的な言い訳で自らを正当化しつつ、
凍った死人の肉を食べた。
人間は愛着がなければ豚どころかヒトでも食べるのだ。
ただ、映画には最後まで食べれず餓死した人がいたと
記憶している。豚でもヒトでも腹が減ったら
容赦なく食べるのが人間なら、
食べないと死ぬとわかってても食べないのも人間だ。
象のはなこは僕にとってはただの象だが、
あのおじさんにとってはかけがえのない存在だったのだろう。
はな子はこれから国立科学博物館に行くという。
死んでなお、矛盾だらけの人間のために働くのか。
彼女のことはあまり知らないが、
無理せんでよかばい、と言いたい。
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