普段から、言葉にひっかかることがある。
独り言でも、適当な言葉を使うと、
自分に言葉尻を掴まえられる。
「まあ、あいつハンサムだからな」
「ハンサム?ハンサムっていうか、さわやかじゃない?」
「んー、さわやかってより、目鼻立ちがはっきりしてるってことでしょ?」
「ピンポイントに、鼻筋が通ってるって言ったほうがよくない?」
「だからそれが、器量好しってことでしょ」
「やっぱりハンサムってことなんじゃんよ」
「いや、ハンサムってのはさ、整ってるってことでさ、それが与える印象を含んでないんだよ」
頭の中が、常にうるさい。
普段はそれでもかまわないが、
感情的になった時もこういうのが顔を出す。
「なんでちゃんと彼女を、支えてあげられなかったんだろう・・・」
うぅ、うぅ。
彼女に対する悲しさと後悔が胸に広がり、
涙が止まらない。
嗚咽が漏れ、全身が熱くなってくる。
「ぼ、ぼくは・・彼女に何もしてあげられなかった!!」
後悔の言葉が、からだの外に溢れ出る。
僕は彼女に何もしてあげられなかったのだ。
「いや、何もっていっても、何もじゃなくね?」
「あの時はかけつけたし、あの時もちゃんと相談のったし」
「あの時だって手伝ったし、あの時は二時間も待ったし」
「何もってわけじゃないよね」
「いや、何もってのは、本当に何もってわけじゃなくてさ、何もしていないのと同じくらいっていう意味でさ」
「だったら、何もって言わずに、ほとんど何もとかさ、違う言い方がいいんじゃない?」
「いや、でもそれはほぼ同義っていうかさ、泣いてんだからさ、勘弁してよ」
「でもさ、何もっていうのは、正確じゃないよね」
こんな声が聞こえると涙も乾く。
絶望くらい、簡単にさせてくれ、と思う。
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