高齢化社会においては、多くの人がボケてくる。
ボケは、介護する周りの人たちが大変なので、
なるべくボケないでほしいというのは、家族の切なる願いだ。
ボケないための予防法は世間にたくさんあるだろうが、
僕が知っている「ぼけ」ない方法の一つに、「とぼける」というのがある。
「ボケる」には頭を使わないが、「とぼける」には頭を使う。
頭が正常な人のみが、「とぼけ」ていられるのだ。
老人にはもっともっと、「とぼけて」いてほしいと思う。
「塩爺」こと塩川正十郎さんは、とぼけていた。
80歳の高齢で財務相を務め、国会で野党に追求されても、
面倒なことは「忘れてしまいました」で済ましていた。
「とぼけた」老人は、ボケているのかとぼけているのかわからないので、
聞いている方は、何も追求できない。
塩爺は「とぼけて」いたので、
「議員は普通の人と違って金がかかるのだ」と正面から吐き、
「人間平等だと思っていたらとんでもない間違いだ」
と有権者に嫌われるような発言を平気でしていた。
テレビの情報番組で「騒音おばさん」を見て、
「これキチガイの顔ですわ」とも、つぶやいていた。
「とぼけた」老人は、片足を社会の外に踏み出しているので、
社会の中の人が言えないことでも、簡単に言える。
多くの人が言えないことを言ってもらうためにも、
老人には「とぼけて」いてほしい。
そういえば、漫画家の水木しげる先生も「とぼけて」いた。
先生は、周りが、「大御所妖怪」として扱いすぎたので、
いつも、率先して「とぼけ」を演じていたように思う。
先生が海外旅行に行く際も、航空会社にカードを薦められて、
「マイレージカードはいりません、私はVISAをもってますから」
と言ったという。
と、とぼけている。
(とぼけているんだよねぇ・・・)
そんな水木先生だから、若者に向かって、
「少年よ、がんばるなかれ」とか、
「努力は人を裏切る」とか、
普通の人が言えないことを、平気で言えた。
水木先生のマンガのキャラもたいてい「とぼけて」いて、
鬼太郎は「いやあ、ぼく、生まれつきのマンガぎらいです」
と言っていたし、
ねずみ男も、砂かけばばあが
「子泣きじじいの指は食ってもスグ生えるんじゃ」
と言った時、
「げっ、おばけ」と言って驚いていた。
(お前がな!)
妖怪は、とぼけている。
人間の中で妖怪にもっとも近い老人には、もっと「とぼけて」いてほしい。
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