国立民族学博物館で「見世物大博覧会」が絶賛、開催されている。
見世物小屋など、見世物の歴史やジャンルを知ることができるいい展覧会だが、
若い人にはあまりおすすめしない。
なんせ、出てくるのが、
蛇女とかカニ男とかポンプ人間とか電気人間とか
今の明るいメディアには出ないような展示物だ。
僕は時代的に、見世物小屋の残り香をちらっと嗅いだくらいなので、
見世物小屋に思い入れはないが、
隣のおじさん達は昔の思い出を語り合っていた。
おじさんおばさん向けかもしれない。
今や「見世物(見せ物)」という言葉自体にタブーなイメージがあり、
「見世物」は「晒し者」とイコールに捉えられている。
当時もその感覚は同じだったのかもしれないが、
「見世物」で食っていくしかない人達が生きていく余白は、
社会に残っていたように思う。
江戸時代の見世物小屋では、
珍奇なことができる人間だけでなく
珍しい動物も「見世物」の主役だったらしい。
まず、ラクダ。
それから、ゾウ。
他にも、トラや豹、インコやテナガザルなんかも人気があったらしい。
多分、そういった動物を使った興行はサーカスに受け継がれていったのだが、
動物を使わないサーカス団、シルク・ドゥ・ソレイユが世界中で人気を博して以降、
動物を見世物にすること自体、廃れていった。
ペットが家族の一員になっている流れもあり、
以前よりも動物を「見世物」にすることへの嫌悪感を感じているのだろう。
子どもの頃、見世物に感化され、強い憧れを抱いていた寺山修司の言葉も、
展示物と一緒に紹介してあった。
「天井桟敷」を主催していた寺山修司がどれだけ見世物小屋に影響を受けたかは
作品を見れば、よくわかる。
「見世物は、私の少年時代、あこがれの的であった。
だが、現実の舞台から「血湧き肉躍る」幻想の世界が久しい日がたった。
私はなんとかして、あの少年時代の幻想と現代が失った夢とを結びつけて、
新しいドラマをつくりたいと思い、天井桟敷を作ったのである」
そして、寺山修司は「天井桟敷」で、
見世物小屋に登場していたような、
おどろおどろしい社会のアウトサイダー達を主役に抜擢した。
オカマ、ゲイボーイ、肥満人(展示のままの表現)。
世間に蔑まれ、陰で生きる彼ら(彼女ら)は、
前衛的な劇団の舞台の上で、初めてスポットライトを浴びた。
あれ?
オカマ、ゲイボーイ、肥満人?
当時の彼ら(彼女ら)は、世に蔑まれ、
演劇の舞台でだけハツラツと出来る人達だったのかもしれないが、
今や、その人達は、テレビの中で大活躍している。
オネエもゲイもおデブちゃんも、
日本の一番メジャーなメディアのバラエティ番組の中で、ハツラツとしている。
テレビ局側が、その人達に頼っているくらいだ。
なんだかんだ世間は寛容になったのかもしれない。
丸山明宏(美輪さん)が若い時に比べると、
明るいメディアの中で”演じる”悲しさはあるとしても、
なんだかんだ、アウトサイダーには生きやすい世の中になってるんだよなあと再認識する。
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