在日8年目の香港人の友達が話かけてくる。
「昨日の残りだけど、肉ジャゲ食べる?」
他の日本語の発音はほぼ完璧なだけに、指摘しようかどうか迷う。
「肉ジャゲ」の響きが面白いので、放っておく。
解剖学者の養老先生が講演している。
「子どもはするどい質問をしますね。なんでつばきは外にでたら汚くなるのか、と」
会場の人はキョトンとしている。
「口の中にあるつばきは汚くないけど、それを外に吐くと、とたんに人はそれを汚いものとして扱う」
どうやら「つばき」とは「つば」のことだと、みんな、だんだんわかってくる。
今は誰も言わなくなった「唾く」の連用形、「つばき」なんて
誰も理解できないことを知ってるはずなのに、いつも養老先生は、「つばき」と言う。
多分、響きが気に入っているのだろう。
以前、職場の上司が「なるべくちゃんとお客さんから、フィールドバックもらおうね」と、
「フィールドバック」というワードを連呼していた。
その度に、心の中で、フィードバックですよと呟いたが、
「フィードバック」も「フィールドバック」も似たようなもんだったし、
その上司の前髪は後退していて、頭のフィールドがバックしていることへの危機意識が、
無意識に言葉になって出ているのかなと思ったので、そのまま放っておいた。
その後、誰かが指摘したのだろう。
ちゃんと「フィールドバック」は「フィードバック」に直っていた。
僕みたく、変に深読みしない人が他にいてくれて、よかったよかった。
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