「擬態」のはなし。
ジャコウアゲハは、
草に含まれる毒を体内に蓄えておくことができる。
そのため、ジャコウアゲハを食べた鳥は、
気持ち悪さのあまり、結局吐き出してしまうので、
鳥は、その後ジャコウアゲハを食べようとしない。
そのことに目をつけたクロアゲハとオナガアゲハは、
自らの外見をジャコウアゲハに似せることで、
鳥からの捕食を免れることに成功している。
ジャコウアゲハを真似することで、危険を回避する。
この場合、本当に毒を持っているジャコウアゲハを
「モデル」と呼び、
それを「擬態」しているクロアゲハやオナガアゲハを
「ミミック(真似)」と呼ぶ。
生き物は、他を真似することで、生き延びている。
ドイツに、「ロケットインターネット」という企業がある。
「IT界の真似っ子」として有名なこの企業は、
アメリカなどで成功した他企業のビジネスモデルを、
そのまま真似て、
まだインターネット産業が勃興していない国で展開し、成功している。
真似された企業はさぞ悔しいだろうが、
真似しているのはサービスやビジネスモデルなので、
訴えることもできない。
サービスのような、言葉で説明できる、ロジカルなことは、
簡単に真似することができる。
アメリカでロジカルなことが、
アジアにくると、ロジカルでなくなるわけではない。
ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」の代表、猪子さんは、
だからこそ、言葉で説明できないことをやるべきだ、という。
簡単に「ミミック」されない仕事。
例えば、アート。
アートは、説明出来ない。
真似できない。
真似しようとして、同じようなものを作っても、真似にならない。
オリンピックのエンブレム問題を見てもわかるように、
デザインは簡単に真似することができるが、
アートは、他の作品をなぞって作っても、たいした作品にはならない。
そこには、かたち以上の何かがある。
コンピューターが出来て、
ロジックもかたちも、簡単にコピーできる時代になったが、
コピーできないのは、
アートのような、人の中に潜む、まだ言葉にならない感覚の表現だ。
言葉にならないものを意識化するのは難しい。
だが、それができれば、誰からも「ミミック」されない。
自然界では、「ミミック」した側も、された側も
鳥に食べられずにすんでいるが、
人間界では、「ミミック」された側の「価値」は落ちてしまう。
誰かを「ミミック」したくなければ、
「ミミック」されない「価値」を作るしかない。
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