現在の中学校では、ダンスが必修だという。
創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンス(ヒップホップのこと)
の三つから一つを選ぶらしいが、
自分が中学生の時、女子がやっている創作ダンスを横目で見ていた僕は、
今、中学生じゃなくて本当によかったと、胸をなでおろす。
思春期に、自分たちで考えた踊りを、人前で踊るなんて、拷問だ。
読書感想文の県入選作品が新聞にのるように、
上手い人の創作ダンスが人に見られるのはいい。
ただ、下手くそな読書感想文を人目に晒されるのが罰ゲームであるように、
下手くそなダンスを人前で踊らせるのは、拷問だ。
自己表現は、やりたい人だけ、やればいい。
中学生が数学で自己表現をしようと思うことがないのは、
誰も、数学を、自己表現の道具だと思っていないからだ。
実際、中学生が学ぶ数学に自己表現の余地はまったくないのだが、
大学の数学科を出て、数学者にでもなれば、
その人なりの「独創性」が入り込む余地は、数学にも、生まれる。
でも、それは、基本を積み上げた後の話だ。
中学生の段階では、歴代の数学者が積み上げたものをなぞるだけで精一杯だし、
そこを通らなければ、後の「独創性」につながる可能性は出てこない。
ダンスも、基本的には、同じだと思う。
表現をする前の積み重ねができていない状態で、
自己表現させるのは、酷。非道い。
少なくとも、僕が中学生なら、そう思う。
ダンスは、数学と違って、本来、多くの人が楽しいと思えるものだ。
16世紀の数学者が導き出した数式に震える中学生は少ないけれど、
江戸時代にみんなが踊っていたリズムで楽しくなる中学生は、
多分、たくさんいる。
「自分なりのダンス」を踊るのではなく、
「これまでのダンス」をなぞるだけでも、十分、楽しい。
ダンスも、中学生には、「詰め込み」教育でいいと思う。
ダンスが学校で必修化され、
ヒップホップが積極的に取り入れられているということは、
行政は、みんなが踊ることを後押ししているのかもしれない。
しかし、この間まで、
「客を許可なく踊らせた」として、多くのクラブを、
風営法で取締まり、廃業に追い込んでもいた。
(2016年、改正)
行政は、みんなに踊って欲しいのか、
それとも踊って欲しくないのか、よくわからない。
まあ、でも、「餅」や「火」に関しても以前書いたように、
「踊り」も、基本の部分は、行政の管轄ではない。
「行政」ができるよりはるか昔に、人は歌い、踊っていた。
「踊ること」を禁止したり、必修にして強制することは、
基本的には、してはいけないと、僕は思う。
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