「アウトリーチ」という言葉がある。
直訳すると、手を外へ伸ばすこと。
社会福祉や医療で、積極的に街に出ていくことをいう。
例えば、社会福祉士が頼まれたわけでもないのに、
助けが必要な人の家を訪問したりすること。
多分、「アウトリーチ」を日本語でいうと
「おせっかい」のことだと思う。
「アファーマティブアクション」という言葉もある。
日本語では「積極的是正措置」と訳されるもので、
差別を積極的になくそうという動きのことを指す。
例えば、大学入試で、”黒人の特別枠”を作ること。
黒人に頼まれたわけでもないけど、
黒人が入れる枠を一定数確保する。
多分、これも、日本語でいうと「おせっかい」のことだ。
「おせっかい」は難しい。
いきすぎると迷惑になるし、
かといって躊躇していても、いろんな問題は解決しない。
個人的な「おせっかい」でも難しいのに、
組織や理念としての「おせっかい」なら、なお難しい。
先月テレビで「魔女の宅急便」がやっていた。
何度放送しても、ジブリ作品は視聴率が高いらしい。
なんてったって、
ジブリ作品には「おせっかい」な人ばかり出てくる。
初対面のキキを家に住まわせてくれるおソノさんも、
配達してもらっただけなのに、キキにケーキを贈る老婦人も、
見ず知らずのキキのために、人形を縫ってくれるウルスラも、
みんなおせっかいだ。
みんな、必要以上のことをやってくる。
ジブリ作品には、そういう、
おせっかいで、好奇心が強くて、面倒見のいい人ばかり出てくる。
多分、視聴者は、そういうのが好きなのだ。
ほんとうは、そういう、「おせっかい」社会に憧れているのだ。
「おせっかい」という言葉には、
これまで悪い意味でしか使われてこなかったが、
これからは、いい意味でも使われるようになると思う。
「やばい」に「すごい」という肯定的な意味が加わったように、
「おせっかい」にも、
「積極的優しさ」という意味が付け加えられるのだろう。
これまで「おせっかい」な人には、
嫌な顔で「ほんと、おせっかい!」と吐き捨てていたが、
これからは、笑って、
「ほんと、あの人”おせっかい”なんだもんなあ」
と言うようになるのだろう、と思う。
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