いたたまれない

本当に大事なことは学校では教えてくれない。
空気の読み方とか。
ジャケットとジーンズの合わせ方とか。
行きたくない飲み会の断り方とか。
その中でも一番僕が教えてもらえなかったなと思うのが、
いたたまれなくなった時の振る舞い方だ。

ぼくはなんだか、すぐに、いたたまれない気分になる。
人がスベっていたり、
恥をかいたりしているのを直視できない。
テレビで、芸人の漫才を見ていても、
スベると思った瞬間、
音量をミュートにしてしまう。
どうしても見ていられない。
すぐにいたたまれなくなってしまう。

だから現実では、
なるべくいたたまれなくなる場面に出くわさないようにしているのに、
そういう場面には、思わぬところで、出くわしてしまう。
例えば、去年の春参加したタケノコ掘り。
ただのタケノコ掘りだと聞かされていたのに、
タケノコ掘りを主催する人が、なぜか、腹話術師だった。
そんなの聞いてない。
竹林の中で、参加者に囲まれた主催者が、
左手にはめた腹話術人形”タケちゃん”との掛け合いを始める。
主催者「たけちゃん、タケノコ掘りの注意事項って知っとる?」
人形「そんなん知っとるわ。徳川埋蔵金を掘り出さない、やろ!」
主催者「アホ!そんなん注意して掘っても、出てこんわ!」

竹林での素人と人形の漫才に、会場には白けた空気が流れるが、
それでも、皆、大人なので、黙って聞いている。
主催者と人形の「漫才」は、その後、
「タケノコクイズ」「タケノコじゃんけん大会」と続いていたが、
僕は、あまりのいたたまれなさに、
途中で、声の聞こえない竹やぶの奥へと消えていった。

どうしても聞いていられない。
その場に留まっていられない。
こんな時にどうすればいいのか、学校では誰も教えてくれなかった。
このざわついた気持ちを、どう処理すればいいか、
今でもわかっていないってことは、
学校でも、学校外でも、僕は教わらなかったんだろう。
え?
じゃあ、逆に、疑問。

みんな、
そういうの、
どこで、習ったの・・・?

 

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