仕事でタイに出かけた際、
タイの高校生に学校内を案内してもらうことがあった。
その高校はレベルの高い高校で、
英語力もプレゼン発表の内容も、
連れて行った日本の高校生のはるか上をいくものだったが、
成熟度でいうと、タイの高校生は日本の高校生よりも数年遅い。
高校生2年生だというのに、
日本の中学生のような幼い行動をするし、
表情にも、日本の高校生には見られないあどけなさが残っている。
その子たちを見て、以前、
東南アジアの大学生と、夏に海水浴に行った時のことを思いだした。
彼らは、すでに大学生だというのに、
高校のスクール水着を着てやってきた。
大学生といえば、異性の目を気にするのが当たり前の年頃なのに、
彼らは、異性には目もくれず、がっつり、高校の水着で百道浜の海を泳いでいた。
学校を案内してくれた子たちの中に、
いろいろと気が利かせて、世話を焼いてくれる女子生徒がおり、
その子と、タイのことや日本のことについて世間話をしていたのだけど、
将来の話になり、「どこの大学に行くの」と聞くと、
地元の大学に行くつもりだと、ちょっとはにかんで、その子は言った。
そこは、首都から飛行機で一時間くらい離れた地方都市だったので、
「バンコクに出るつもりもないの?」と、
地元に残るという選択が、僕にとっては意外に思えたので聞くと、
「私は、地元の大学でいいんだ」と、自分に言い聞かせるような答え方をした。
まあ、そういう考え方の子なのかなと思いつつ、
答え方がちょっとひっかかったので、
話のついでに、自分が高校の時、海外に行ったこと、
海外で勉強するのは、いろんな面で刺激になることについて話した。
それから、その学校を離れ、他の目的地を回った後、日本に戻ると、
その子からメッセージが届いていた。
(ほんとに、今の時代は、高校生でも、すぐにSNSでつながれる時代だ)
彼女のメッセージには、僕と話してインスピレーションをもらったこと、
今まで奨学金の関係から、自分の英語力や成績では難しいと思っていた海外の大学が、
身近な人から話を聞けたことで、一気に現実味を帯びたこと。
これから、海外の大学に行けるよう、頑張ってみたい
という旨が、書かれていた。
たった数時間、大学のことについては、ほんの数分間だけ話したことが、
彼女にとっては、将来のビジョンを変えるきっかけになったのだ。
「身近な人」と彼女は書いたけど、
身近どころか、初めて会う日本人との数分の会話で、
「遠い出来事」が”現実味”を帯びて感じられる。
「現実味」って、そんなものなのだ。
おせっかいってするもんだなあと思う。
別に、初対面の海外の高校生に、自分のことを話す必要もなかったし、
彼女が地元の大学に行くつもりだと行ってるのだから、
海外で勉強することの良さなんて口にしなくてもよかったのに、
ちょっとしたおせっかいで話してみたら、
そのことが、彼女の考え方に、ほんの少しの変化を招いた。
もちろん、外国人との会話で、気持ちが瞬間的に高ぶっているだけで、
そのうち、やっぱり地元の大学だなと、現実を見始めるかもしれない。
それでも、人生、何がきっかけになるかはわからない。
ドラゴンズの左腕・濱田は、小学生の頃、クリスマスリースを作るために
母親と公園にドングリとマツボックリを拾いに行き、
マツボックリがなかなか見つからなかったために、
違う公園に歩いていくと、そこで野球少年に声をかけられ、
野球を始めることになった。
女優のシャーリーズ・セロンは、銀行からチェックの現金化を断られ、
「なんで金が下ろせないの!」と大声で叫んでいた姿が、
敏腕スカウトの目に止まり、一気に女優としてスターダムをのしあがった。
なにが転機になるかはわからない。
人生万事塞翁が馬。
賽は投げてみるに限る。
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