高校生の時、「逆ギレ」という言葉を深夜ラジオで
初めて耳にした。
今では当たり前のように使われている言葉も、
当時はお笑い芸人くらいしか使っていなかった。
新しい響きのする「逆ギレ」という言葉を使いたくて
しょうがない僕は、まったく逆ギレしてない友達に向かって、
「おい、逆ギレすんなよぉー!」
とことあるごとに言っていた。
周りの友達はといえば、僕より更に、
「逆ギレ」が何なのかわかっていないのでスルーしていたが、
僕は「逆ギレ」を言えただけで満足だった。
(「スルー」も、サッカーとバスケでしか使っていなかった)
大学生になって、「宝くじは買わないと、当たらない」
という表現を何かで知り、
無性に、言いたくてたまらない時期があった。
今考えると、そんなセリフの何がいいのかさっぱりだけど、
とにかく言いたくてたまらない。
でも、そんな時に限ってなかなかばっちりのシチュエーション
というものは巡ってこない。
そんな時キャンパスで、
ある若い女性講師に恋をしてしまった友人に会った。
その講師は、誰が見ても美人で、大人の雰囲気があって、
ちゃらい大学生なんて相手にしないことは明らかだったので、
「あんまり、本気になんなって。
他にも可愛い子は、いるじゃんよ」
といつも彼を慰めていた。
(しかも、相手に彼氏がいることも分かっていたし・・・。)
しかし、状況は一変している。
僕は、今、あのセリフが言いたくてたまらない。
いつものように、奴は軽くため息をついて、
その講師がいかに魅力的かという話をしてくる。
「でも、無理だよなあ。あぁ、なんで俺まだ、大学生なんだろ。
俺が、社会人だったらなあ・・・。
チャンスあったかもしれないのになあ・・。」
「おい。」
「ん?」
「諦めんの?」
「は?」
「そんな、簡単に諦めていいの?」
今は、彼の背中を押す時だ。
「いや、待てよ。お前がいっつも無理だって言ってんじゃん。
何よ、急に。」
「ほんとにいいの?後悔しない?」
「いや、無理だって。知ってんだろ?あの人、彼氏いんだぜ。
しかも、向こうからしたら大学生なんて、相手になんないよ。」
「お前何も言ってないじゃん。気持ち伝えてないじゃん。
相手からしたら、たまに話にくるけど、
もじもじしてる奴くらいにしか思ってねえよ。」
「そうかもしんないけどさ・・・。」
「言わなきゃわかんないだろ!
相手がお前のこと意識すんのは、お前が伝えた後の話だよ。」
「・・・」
「伝えなきゃ、何も始まんないんじゃねえの!?
あのな、宝くじはな、買わないと、当たんねえんだぞ!」
やっと、言えた。
イエタッーーーーーーー!!!
心の中で、僕は叫んだ。
ずっと喉に詰まっていたものが一気に取れたようだ。
いやあ、いいこと言った気がする。
さあ、友達呼んで、飲みに行こう。
僕はそんな心の叫びをおくびにもださず、
彼の方を真剣に向いていた。
「・・・・・そ、そうだよな。
宝くじは、買わなきゃ当たんないよな!」
周りの誰からも「やめとけ」と言われてた友人は、
後押ししてくれる言葉を待っていたようだった。
いいことを、言った。
後日、彼は女性講師に正面から告白して見事、振られていた。
なかなか、宝くじって当たんないもんですね。
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