外でご飯を食べていたら、隣の席に
サラリーマンの彼氏とその彼女が座った。
お互い結婚を考えているような口ぶりだが、
彼女の性格が穏やかだからなのか、
なかなか真正面から彼氏にものを言えていない。
さっきから、彼氏がつけているネクタイの話をしている。
「ネクタイは、いつも誰が買いよっと?」
「ネクタイは、母さんが買っとるよ」
「お母さんなんや・・・」
「母さんは、父さんのネクタイをずっと選んじょったから、
まず、間違いないんよね」
「ふーん」
「ジーンズとかコートとかはさ、自分で買い行くけど、
ネクタイはさ、いつも母さんなんよ」
「へえ。でも、その色、スーツに合わせるの難しそうやね」
「んー、よう、わからんけど、母さんが選んだやつやからね。
間違いないんよね」
「シャツとかスーツとの色の組み合わせがさ、なかなか、
難しいなあって思うんよね」
「なに?似会っとらんてこと?」
「いや、似会っとらんとかやなくて、
あたしやったら、ハードル高いけん、選ばんかなって・・・」
「俺にはようわからんけど、
母さんは、父さんのネクタイをずっと買ってきとるけんね」
「・・・。その色はビジネススーツには合わせにくいけん、
普通は、選ばんけどね・・・」
「あ、そうね・・・」
「うん。スーツもさ、いつもベーシックなの着よるやん。
それには、そのネクタイは、普通は合わせきらんかなあ」
「てことはさ、母さんはさ、もしかしたら、普通の人の持ち
合わせとらんくらいハイレベルなセンス持っとっとかもし
れんね。もう、普通の人より、一個上のステージに行って
しもうとるとやろね。」
呆れた顔で、カフェラテの入ったカップに口を当てる彼女。
ちらっと横目で彼のネクタイを見た。
僕はださいとかなんとかいえる立場にないけど、
いや、これは、ださい。
デザインが古いのに加えて、鮮やかなオレンジの生地が
テカテカ光っている。
お姉さん、僕はあなたを支持するよ。
でも、彼の家では、彼とお姑さんがタッグ組んで、
いつも2対1で戦うんだろうね。
ファイト!頑張ってね。
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