アシンメトリー

「アシンメトリー」って言葉を初めて聞いたのは、髪型の話だったような気がする。
左と右で違う髪型。
「非対称性」。
一時期、その非対称性が気に入っていて、右と左でズラした髪型をしていたけど、歳とともに右と左はイーブンになっていった。
それが「丸くなる」「おとなになる」ということなのだろうか。

日本の美術作品には、右と左の非対称性を強調した作品が多く見られ、そうした、他のアジア美術では見られない、ぐらついた美の形は、「割り切れない」「不安定」というイメージから、「奇数の美」と呼ばれたりする。
つまり、アシンメトリーの髪型は、「奇数の美」と呼ばれてもよいのだ。

そういえば、どの分野の言葉かは忘れたが、「ポジティブ・ネガティブ・アシンメトリー」という言葉もある。
「ポジティブ」と「ネガティブ」が「非対称」っていうわけで、例えば、働いている会社の給料が悪くなる(ネガティブ)と、会社に対する文句が増えるが、会社の給料が良くなる(ポジティブ)と、その分、会社に対する愛社精神が増えるかっていうと、増えない。
つまり、悪いほうの(ネガティブな)効果は効きが強いんだけど、良いほうの(ポジティブな)効果は効きが悪いという話。
人はネガティブな変化に対して敏感だという「性悪説」を基にしたような話だが、かつて、自分の地元の方言を集めていた時に、愚痴や文句を表す形容詞の多さに驚いた経験のある自分としては、「そりゃ、そうだすよね」と首肯してしまう。
今の総理大臣は、「賃上げしろ」「賃上げしろ」と、企業に給料アップを要求しているが、企業の経営陣がなかなか「賃上げ」しないのは、ポジティブな変化を起こしても、社員から大してポジティブなリアクションが返ってこないことを知っているからなのかもしれない。
労働組合は、「春闘」で戦う前に、「ポジティブな変化を起こしてくれたら、それ相応のポジティブな喜びを表しますよ」と宣言しておいたほうが、よりよい結果を引き出せるのかもしれない。

そもそも、日本の人口構造自体が現在、超絶アシンメトリーになってしまっており、右(古い世代)と左(新しい世代)が大きく「非対称」になってしまっている。
それにより年金制度も子育て制度もいびつなものになってしまっているが、「奇数の美」を尊ぶ国民性からすると、この「不安定さ」の中にも美しさを見出したいところではある。
が、髪型と社会システムは違う。
髪は、右が短くても左が短くてもどちらでもいいが、人口は、少ない方が多い方よりも損をする。
人口のアシンメトリーが数年単位で是正できない以上、人為的に変化を起こすしかない。

それでいうとさ、総理大臣も、自治体の首長もさ、抜本的な子育て支援を打ち出すようなポジティブな変化を起こしてくれたら、それ相応のポジティブな感謝の言葉や喜びの舞を贈る用意はあるので、怖がらないで、しっかりやってくれていいんだよ。

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