車を走らせていると「雪舟の郷記念館」という看板が目に入る。
そのあたりの土地は、水墨画の大家、雪舟絵ゆかりの地らしく、
雪舟の作品が多数残っているという。
雪舟は、「画聖」とも呼ばれる室町時代の禅僧で、
現存する作品のうち6点が国宝に認定されている、
日本の美術史の中でも群を抜いて特別な人だ。
その日本美術史最高峰のアーティストを擁する記念館は、
駐車場から察するに、今日も、お客さんで賑わっている様子はない。
日本美術史上最高峰といえども、
時間が経てば、その価値が一般人にはわからなくなる。
今の日本人が雪舟の凄さにピンとこないのは、
水墨画というジャンル自体に接していないということもあるけれど、
雪舟が日本水墨画の大家で、水墨画のスタンダードを作った人だからという理由もある。
日本人にとって、水墨画といえば雪舟であって、
どの水墨画を見ても雪舟っぽく見えるのであって、
そのジャンルのスタンダードを作った人の作品を改めて見ても、
何に驚いていいのかよくわからない。
ただ、スタンダードを作った人の作品には、
時代を経ても、色褪せない、作品の強さがある。
ほとんどの現代人にはピンとこなくても、
きちんと絵の見方がわかれば、たぶん、その凄さは伝わる。
洞窟に座るダルマさんを描いた「慧可断臂図」なんかは、
キュビズム期のピカソが意図的にやっていたような、
多視点を導入した形で、水墨画を描きあげている。
たぶん、雪舟はピカソと違って、無意識に。
雪舟が凄かったのは、中国の水墨画のスタンダードをマスターした上で、
そういった自らの手法を取り入れ、
日本の水墨画のスタンダードを作っていったことだ。
スタンダードを作る人は、ただの上手い人でも、
技術に長けただけの人でもない。
技術を習得した上で、自分を掘っていった人だ。
そして、そういう人の作品には、何かしら見たくなる力がある。
もしあなたが、その力をまだ感じていない人は、
まずは、「慧可断臂図」を見に「雪舟の郷記念館」へ行こう。
あ、間違えた。
「慧可断臂図」は「雪舟の郷記念館」じゃなく、
「京都国立博物館」にあるんだった。
「雪舟の郷記念館」に国宝はないんだった・・・。
そうだ、「雪舟の郷記念館」ではなく、京都へ行こう。
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