一本釣り
「店長、電話かかってますよー」
自分の親が営んでいるスーパーで店長をやっていた時に、
一本の電話がかかってきた。
電話に出ると、トーンを落とした男の声。
「もしもし、店長様ですか?わたくし、ヘッドハンティング会社の者ですが・・・」
「へ、ヘッドハンティング!?」
男は、いかにも重大な話であるかのように、静かなトーンで続ける。
「二日後、会社の誰にも告げずに、〇〇ホテルのロビーまで来てもらえますか」
こいつ、個人商店の社長の一人息子をヘッドハンティングしようとしてる。
ば、ばかすぎる・・・。
おしゃれ番長
中学生の頃、夏服から冬服に衣替えする日の二日前に、
わざとフライングして学ランを来てくるやつがいた。
皆が白シャツを着ている中、一人だけ黒い学ランのあいつ。
あいつは、季節を先取りするオシャレボーイだった。
大学生になって駅で久しぶりに見たあいつは、
ジャケットをジーンズに合わせたコーディネートで電車を待っていた。
大学生になっても、おしゃれボーイは健在だった。
思えばそいつは、
僕らがおでこにハチマキをきつく巻いていた小学校の運動会で、
一人、首にゆるくハチマキをかけてたようなやつだった。
あん時から、あいつは、一歩先行ってもんな。
正しいことば
最近「天然パーマ」という言葉をあまり聞かない。
天然パーマの人が減ったのかもしれない。
世間が、人を「天然」と呼ぶことに、
気を使っているのかもしれない。
最近は、ハーフの人のことを「ミックス」と呼ぶという話も聞く。
天然パーマの人が「ナチュラル」と呼ばれる日も近いかもしれない。